ヒラメ刺身の切り方|そぎ切り・薄造り・えんがわまで詳しく解説

こんにちは、暮らし比較ナビのしのいちです。スーパーの鮮魚コーナーでヒラメの柵を見つけると、つい手が伸びてしまいます。

ただ、白身の柵を前にすると「マグロみたいに厚く切っていいの?」「えんがわってどこをどう切るの?」と迷う人は多いのではないでしょうか。

正直に言うと、私も刺身の切り方はまだまだ勉強中です。

包丁は、よく行くスーパーに数か月に1回お店を出してくれる研屋さんから買った、普通の家庭用三徳包丁。YouTubeを見ても縦だか横だかピンとこなくて、切り方は正直なところ適当です。

うまくいく日もあれば、全然ダメな日もあります。それでも、切り方で味の良し悪しが変わるのは分かる気がするんですよね。

この記事では、ヒラメの柵を置く向きから、そぎ切り・薄造りの手順、えんがわを食べやすく切る方法、そして薄く切るための道具選びまで、家庭で試しやすい形でまとめました。

私と同じように「少しずつ上手になりたい」という人の参考になればうれしいです。

この記事でわかること
  • ヒラメの刺身がそぎ切り・薄造りに向く理由
  • ヒラメの柵を置く向きと切り始める位置
  • えんがわを柵から外して食べやすく切る手順
  • 薄く切るために見直したい包丁と道具の選び方

ヒラメの刺身がそぎ切りと薄造りに向く理由

まずは「なぜヒラメは薄く切るのが基本なのか」という話から。ここを押さえておくと、厚みや角度で迷ったときの判断がぐっと楽になります。身質と食感の関係を、できるだけかみ砕いて説明していきますね。

身が締まった白身は薄く広く切るとおいしい

ヒラメは、タイやカワハギと同じく身がきゅっと締まった白身魚です。マグロやサーモンのように身がやわらかく脂の多い魚とは、口に入れたときの感触がまるで違います。噛むとしっかり押し返してくる弾力があって、これがヒラメの持ち味でもあるんですよね。

この締まった身を厚く切ると、弾力が前に出すぎて「硬い」「噛み切れない」と感じやすくなります。そこで活躍するのが、包丁を寝かせて断面を広く取るそぎ切りと、それをさらに薄くした薄造りです。断面が広くなると舌に触れる面積が増えるので、白身ならではの上品な甘みや旨味を感じやすくなります。

例えるなら、硬めのお餅を丸ごとかじるか、薄くのして食べるかの違いに近いかもしれません。同じ素材でも、薄く広げたほうが口の中で扱いやすく、味もじんわり広がるイメージです。ヒラメは「薄く広く」が主役の切り方と覚えておくと、まず間違いありません。

マグロや白身魚などを盛り合わせた家庭の刺身の一皿

マグロや白身魚などを盛り合わせた、わが家の刺身の一皿。赤身と白身では向いている切り方が違います

厚く切ると噛み切りにくくなる

「刺身は厚いほうがぜいたく」という感覚、ありますよね。マグロの赤身やブリなら、8〜12mmくらいの平造りで食べ応えを楽しむのも正解です。ただ、ヒラメで同じ厚みにすると、少し事情が変わります。

締まった白身は筋肉の繊維がしっかりしているので、厚い一切れを噛むと繊維がなかなか断ち切れず、口の中に残りがちです。結果として、せっかくの繊細な甘みより「噛むのに疲れる」印象のほうが勝ってしまうことも。とくに締めてから時間があまりたっていない新鮮なヒラメほど身がぷりっとしているので、なおさら厚切りとの相性は落ちます。

逆に言えば、薄く切ることで繊維を短く断ち、弾力をちょうどよい歯ごたえに変えられるのがヒラメのおもしろいところ。切り方ひとつで同じ柵がまったく違う食べ物に感じられるので、ぜひ一度食べ比べてみてください。刺身の切り方の種類や名前をひと通り知りたい人は、刺身の切り方の種類と平造り・そぎ切り・薄造りの使い分けもあわせてどうぞ。

切る前に確認したいヒラメの柵の特徴

包丁を入れる前に、手元の柵がどの部分なのかを見ておくと失敗が減ります。ヒラメは平たい魚ならではのおろし方をするので、ほかの魚の柵とは形が少し違うんです。ここでは柵の見分け方と、下処理のポイントを見ていきます。

五枚おろしで取れる背身と腹身の違い

一般的な魚は三枚おろしですが、ヒラメやカレイのような平たい魚は五枚おろしが基本です。背骨を中心に、表側と裏側それぞれで「背側の身」と「腹側の身」に分けるので、1尾から4本の柵と中骨が取れる形になります。

背側の身は幅が広くて厚みもあり、刺身にしたときに大きく広い一切れが取れます。腹側の身はやや小ぶりで薄く、内臓を包んでいた部分なので腹骨が付いていることがあります。スーパーで売られている柵も、たいていはこのどれかです。

どちらもおいしいのですが、薄造りで大きな花びらのような一切れを作りたいなら背側、少量をそぎ切りで楽しむなら腹側、というように使い分けるイメージを持っておくと便利ですよ。また、目がある黒い皮の側(表側)のほうが身に厚みが出やすいと言われています。

皮を引いた面と筋の向きの見分け方

ヒラメの柵には、皮を引いた面と、骨に接していた面があります。皮を引いた面は表面がなめらかで、うっすら銀色っぽい膜が見えることが多いです。骨側の面は、骨の跡が筋のように残っていたり、中央に細く血合いが走っていたりします。

刺身の身には筋肉の繊維が走る「筋目」があり、筋目に対して直角に刃を入れて繊維を断つのが基本です。ヒラメは身が白いので、マグロほどはっきり筋が見えないかもしれません。明るい場所で柵を少し傾けて光を当てると、細い線がうっすら並んでいるのが分かるはずです。

筋が見えにくいときは、柵の長い辺に沿って筋が斜めに走っていると考えて、長い辺に対して包丁を斜めに入れる形にすると大きく外しません。そぎ切りは刃を寝かせるぶん、断面がもともと斜めになるので、筋を自然と断ちやすいんですよね。

腹骨や血合いは先に取っておく

切り始める前にもうひと手間。腹側の柵に腹骨が残っていたら、包丁を寝かせて骨の下に入れ、薄くすき取っておきます。骨を残したまま薄造りにすると、口当たりが悪くなるだけでなく、刃が骨に当たって身が裂ける原因にもなります。

柵の中央付近に残る血合い骨(小骨)は、骨抜きで一本ずつ抜くか、骨の並びに沿って細く切り落とすかのどちらか。骨抜きを使う場合は、骨が頭側に向かって斜めに入っているので、その向きに合わせて引き抜くと身割れしにくいとされています。

切る前のチェックポイント

柵が背側か腹側か、皮を引いた面はどちらか、腹骨や小骨が残っていないか。この3点を見てから包丁を持つだけで、仕上がりがかなり変わります。キッチンペーパーで表面の水気を軽く押さえておくのも忘れずに。

ヒラメの柵を置く向きと切り始め

「ヒラメ 刺身 切り方 向き」で調べる人が多いように、柵をどう置いてどこから切るかは、いちばん迷いやすいところです。ここでは右利きを前提に、そぎ切り・薄造りでの置き方を紹介します。左利きの人は左右を反対にして読んでくださいね。

厚い方を奥に皮目側を上に置く

そぎ切りや薄造りでは、柵の身が厚い方を奥、薄い方を手前にして横長に置くのが一般的です。そして、皮を引いたなめらかな面を上にします。皮目側を上にして切ると、盛り付けたときにきれいな面が表に出るので、見た目がぐっと整うんです。

厚い方を奥にする理由は、包丁を寝かせて手前に引いたとき、刃が奥の厚い身から手前の薄い身へと自然に抜けていくから。逆向きに置くと、薄い部分から刃が入ってしまい、最後の厚い部分で刃が止まったり身がちぎれたりしやすくなります。

まな板は乾いた状態にしておき、柵がすべらないようにしておくのもポイント。濡れ布巾をまな板の下に敷いておくと、まな板自体が動きにくくなりますよ。柵の向きや右左、厚みの基本をもっと詳しく知りたい人は、刺身の切り方の基本(柵の向き・右左・厚み)もどうぞ。

右利きは左端から切り進める

平造りは柵の右端から切るのが基本ですが、そぎ切りと薄造りは左端から切り進めるのがセオリーです。ここ、意外と見落としがちなんですよね。私もYouTubeを見ていて「なんで左から?」と首をかしげたクチです。

理由は、包丁を右側に傾けて寝かせるから。左端から刃を斜めに入れると、切り離した身が包丁の上に乗った状態になり、そのまま左側へ移して並べていけます。左手の指先で柵を軽く押さえ、刃を入れた身の端をそっと持ち上げるようにすると、薄い身でも崩れにくくなります。

切った身は左側に少しずつずらしながら重ねていくと、あとで盛り付けるときに向きがそろって扱いやすいです。右から切ろうとすると刃の傾きと身の流れが逆になって、薄い身ほどよれやすくなるので注意しましょう。

ヒラメのそぎ切りの手順とコツ

ここからは実際の切り方です。そぎ切りはヒラメの刺身でいちばん出番が多く、家庭でも取り入れやすい切り方。包丁の角度、厚み、引き方の3つを意識するだけで、見た目も口当たりも変わってきます。

包丁を寝かせる角度と厚みの目安

そぎ切りは、包丁をまな板に対してかなり寝かせ、柵を斜めにそぐように切る方法です。角度が立ちすぎると平造りに近くなり、断面が小さくなってしまいます。水平に近づけるほど断面は広く、薄くなると考えるとイメージしやすいかもしれません。

厚みは、一般的な白身のそぎ切りでおおむね3〜7mmが目安。ヒラメの場合は身が締まっているので、その中でも薄めの3〜5mmくらいにすると食べやすいと思います。あくまで目安なので、柵の厚みや鮮度、好みに合わせて調整してみてください。

コツは、左手の指の腹で柵の上を軽く押さえ、刃がどこまで入っているかを感じ取ること。力を入れて押さえつけると身がつぶれてしまうので、「そっと添える」くらいで十分です。最初は厚みがそろわなくても気にしなくて大丈夫。何切れか続けるうちに、手が角度を覚えてくれますよ。

刃元から刃先まで一度で引き切る

そぎ切りで一番大事なのは、包丁を前後に動かさず、刃元から刃先まで一方向に引いて切ることです。ノコギリのように何度も往復させると、筋繊維や細胞が押しつぶされ、切り口から旨味を含んだ水分(ドリップ)が出やすくなります。すると断面がガタついて、身のツヤもなくなってしまうんです。

刃元を柵の奥側に当て、包丁の重さを利用しながら手前にすーっと一気に引く。これだけで切り口の角がピシッと立ち、しっとりした仕上がりになります。刃渡りが長い包丁ほど一度で引き切りやすいのは、このためです。

家庭用の三徳包丁だと刃渡りが短めなので、幅の広いヒラメの柵では途中で刃が足りなくなることもあります。そんなときは、無理に往復させず、引き終わった位置から包丁を少し戻してもう一度同じ方向に引くようにすると、断面の荒れを抑えやすいです。

◆しのいちのワンポイントアドバイス

私の三徳包丁は、鋼をステンレスでカバーしたタイプ。鋼だけによく切れるので重宝しています。ただ、刃の鋼が出ている部分は、使ったあとよく洗って水気を拭いておかないと、すぐにサビが出てしまうんですよね。切れ味は薄く切るほど効いてくるので、使い終わりの手入れまでがセットだと思っています。

切った身を重ねて盛りやすくする

そぎ切りにした身は、切ったそばから包丁に乗せて皿へ運び、少しずつずらしながら重ねていきます。まな板の上に並べてから一気に移そうとすると、薄い身ほど指でつまんだときによれて形が崩れやすいので注意しましょう。

盛り付けは、切り身を右から左へ、少しずつ重ねて弓なりに流すと動きが出ます。枚数は3切れ、5切れのように奇数にするのが和食の基本とされていて、ちょっとしたことですが見た目の落ち着きが変わるんです。大葉やつま、紅たでなどで色を添えると、白いヒラメの身がいっそう引き立ちます。

同じ白身でも、タイのそぎ切りは皮付きで楽しむ方法など、ヒラメとは少し違う工夫もあります。気になる人は鯛の刺身の切り方(柵の向き・そぎ切り・皮付きのコツ)も読んでみてください。

ヒラメの薄造りを家庭で作るコツ

ヒラメといえば、皿の模様が透けて見えるような薄造りを思い浮かべる人も多いはず。お店で見ると難しそうですが、ポイントを押さえれば家庭でもそれらしく仕上げられます。ここでは厚みの目安、切れ味の大切さ、盛り付けと食べ方を紹介します。

薄造りの厚みの目安と切り方

薄造りは、そぎ切りをさらに薄くした切り方です。厚みの目安は2〜3mmほどで、上手な人が切ると皿の柄がうっすら透けるくらいになります。とはいえ、最初から透けるほど薄くしようとすると、身が破れたり途中で切れたりしがち。まずは3mm前後を目標にするのが現実的かなと思います。

手順の基本はそぎ切りと同じで、皮目を上に、厚い方を奥にして置き、左端から包丁を寝かせて引き切ります。違うのは、包丁をさらに寝かせることと、引く動作をより長く、ゆっくり一定にすること。刃が身の中で止まると、そこに段差ができてしまいます。

切り終わりで包丁を少し立てるようにすると、身の端がきれいに切り離せます。切った身は包丁の上に乗せたまま皿へ運び、端を少し折り返すように置くと、花びらのような立体感が出せますよ。

包丁の切れ味で仕上がりが変わる

薄く切れば切るほど、ごまかしがきかなくなるのが包丁の切れ味です。厚い平造りなら多少切れ味が落ちていても何とかなりますが、2〜3mmの薄造りでは、刃が身に引っかかった瞬間に破れたりよれたりしてしまいます。

ここで効いてくるのが、刺身包丁(柳刃包丁)の構造。柳刃包丁は片側だけに刃が付いた片刃で、刃渡りも長めです。片刃は、切り離す側の身だけを外に押し出しながら進むので、まな板に残る柵の断面をつぶしにくいとされています。刃渡りが長いと一度の引きで切り終えられるので、薄い身でも断面がなめらかになりやすいんです。

つまり、薄造りをきれいに作りたいなら、腕前と同じくらい包丁の状態が大事ということ。私のように切り方がまだ適当な人ほど、道具の力を借りる意味は大きいのかもしれません。あなたの家の包丁は、最後に研いだのはいつでしょうか?

薄造りの盛り付けと食べ方

薄造りは、皿の中心から外側へ向かって円を描くように一枚ずつ並べる「菊盛り」が定番です。柄のある皿や、濃い色の皿を使うと、薄い身越しに模様が透けて見えて華やかになります。薄造り向けの刺身皿は大皿でなくても、直径20cm前後の平たい皿があれば家庭では十分楽しめますよ。

食べ方は、醤油とわさびももちろん合いますが、薄造りならポン酢にもみじおろしとあさつき(細ねぎ)を添えるのがおすすめ。薄い身は調味料とよく絡むので、さっぱりした酸味がヒラメの甘みを引き立ててくれます。すだちやかぼすなどの柑橘をひと搾りするのもいいですね。

柑橘を添えた魚の刺身と鶏の炭火焼き、明太子、冷奴が並ぶ晩酌の食卓

皮を引いた魚の刺身に柑橘を添えた晩酌の食卓。白身の刺身は柑橘やポン酢との相性も抜群です

もうひとつ、薄造りは空気に触れる面積が広いぶん、乾きやすいのが弱点……ではなく注意点。食べる直前に切って、すぐに食卓へ出すのがいちばんおいしく食べるコツです。

えんがわを食べやすく切る方法

ヒラメを丸ごと、あるいはえんがわ付きの柵で買えたら、ぜひ味わってほしいのがえんがわ。コリコリした歯ごたえと脂の甘みがたまらない部位です。ここでは、えんがわがどこにあるのか、どう外して、どう切れば食べやすいのかを順番に見ていきます。

えんがわとはヒラメのどの部分か

えんがわは、ヒラメの背びれと尻びれの付け根にある筋肉です。ひれを動かすための部分なので、よく動く筋肉ならではのしっかりした歯ごたえがあり、脂も多く含まれています。五枚おろしにした柵の外側の縁に、細長い帯のように付いているのがそれです。

1尾のヒラメから取れるえんがわは、柵4本それぞれの縁に1本ずつで、量はごくわずか。だからこそ「えんがわは貴重」と言われるんですね。表面には、ひれの骨の跡のような細かい筋が櫛の歯のように並んでいるので、見た目ですぐに分かると思います。

回転寿司の「えんがわ」は別の魚のことも

回転寿司やスーパーの寿司でよく見かける大ぶりのえんがわは、ヒラメではなく、カラスガレイなど大型のカレイの仲間のものが使われていることが多いと言われます。脂が多くてやわらかく、ヒラメのえんがわとは食感が少し違います。表示を見比べてみるのもおもしろいですよ。

えんがわを柵から切り離す手順

えんがわが付いたままの柵は、刺身にする前に本体の身と切り離しておきます。身とえんがわの境目には、うっすらと線のような境界があるので、そこに沿って包丁をまっすぐ下ろして切り分けましょう。

皮がまだ付いている場合は、えんがわごと皮を引きます。皮引きのコツは「包丁を動かすのではなく、皮を引く」こと。皮を下にして置き、端に刃を斜めに入れて皮まで届いたら、包丁をまな板とほぼ平行に構えて固定します。あとは左手で皮の端をつかみ、小刻みに左右へ揺らしながら引っ張ると、刃が皮と身のあいだを自然にすべっていきます。

えんがわは細くて脂が多いぶん、すべりやすいので、キッチンペーパーで皮の端をつかむと安定しますよ。最後に、ひれの骨の硬い部分が残っていれば、薄く切り落としておくと口当たりがよくなります。

えんがわの刺身は斜めに薄く切る

えんがわは、そのまま厚く切ると筋がしっかりしていて噛み切りにくくなります。そこで、包丁を斜めに入れて、表面の筋を短く断つように薄めにそぎ切りにするのが食べやすく切るコツです。

具体的には、えんがわの帯を横長に置き、端から包丁を斜めに寝かせて、5mm前後の厚みを目安に切っていきます。1切れの長さは3〜4cmくらいにすると、ひと口でちょうどいいサイズになります。細いえんがわなら、斜めに切るだけで断面が広がり、コリコリ感と脂の甘みのバランスがよくなりますよ。

厚みのあるえんがわの場合は、表面に浅い切り込みを何本か入れる「隠し包丁」をしてから切ると、歯切れがよくなって醤油の絡みも増します。脂が多い部位なので、わさび醤油はもちろん、少量の塩とすだちでシンプルに食べるのもおすすめです。

ヒラメの刺身をもっとおいしくする工夫

切り方を覚えたら、ひと工夫で味をさらに引き出す方法も知っておくと楽しみが広がります。同時に、ヒラメを生で食べるときに知っておきたい注意点もここで確認しておきましょう。

昆布締めで旨味を足す

ヒラメのような淡白な白身と相性抜群なのが昆布締めです。酢や水で軽く湿らせた昆布でそぎ切りにした身を挟み、ラップでぴったり包んで冷蔵庫で寝かせます。

昆布が魚の余分な水分を吸い取ると同時に、昆布の旨味成分であるグルタミン酸が身に移るので、ヒラメの持つ旨味と重なって味わいがぐっと深くなります。身もほどよく締まって、ねっとりとした食感に変わるのがおもしろいところです。

寝かせる時間は数時間から半日程度が一般的な目安。ただし、1日以上置くと身が黄色っぽく硬くなってしまうので、時間の管理には気を付けてください。そぎ切りにしてから締めるほか、柵のまま締めてあとから薄造りにする方法もあります。

◆しのいちのワンポイントアドバイス

刺身の切り方がうまくいった日は、なんだかとってもうれしいものです。ただ、うまくいかなくても刺身はちゃんとおいしい。私はそれで十分満足しています。完璧を目指して肩に力を入れるより、「今日は角度を意識してみよう」くらいの気持ちで一つずつ試すほうが、長く楽しめると思いますよ。

生食前に知っておきたい食中毒の注意点

ヒラメの刺身で知っておきたいのが、クドア・セプテンプンクタータという寄生虫による食中毒です。ごく小さく肉眼では見えない寄生虫で、多数寄生したヒラメを生で食べると、食後数時間ほどで一過性の下痢や嘔吐などが起こることがあるとされています。人には寄生せず、これまでの事例では軽症で回復していると報告されています。(出典:農林水産省『ヒラメを介したクドアの一種による食中毒Q&A』)

クドアは冷凍や加熱で予防できるとされる一方、刺身を生で楽しむ場合はその方法が使いにくいのが悩ましいところ。現在は、養殖の段階での対策や出荷前の検査などの取り組みが進められています。家庭では、信頼できるお店で生食用として売られているものを選び、購入後は冷蔵して早めに食べることが基本になります。

体調に異変を感じたら

刺身を食べたあとに下痢や嘔吐、腹痛などが続く場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。また、切り方や酢・塩・わさびなどの調味料では寄生虫対策にならない点にも注意が必要です。食中毒に関する最新の情報は、農林水産省や厚生労働省などの公式サイトで確認しておくと安心です。

ヒラメを薄く切るための道具選び

ここまで読んで「やっぱり薄く切るのは道具次第なんだな」と感じた人もいるかもしれません。最後に、ヒラメの刺身を家で楽しむための包丁や周辺の道具について、選び方の考え方を紹介します。

柳刃包丁が薄造りに向く理由

ヒラメのそぎ切りや薄造りは、刺身の中でもとくに包丁の切れ味と刃渡りの差が出やすい切り方です。三徳包丁でも切れないことはありませんが、刃渡りが短いと一度で引き切れず、両刃は切り離す身と残す身の両方を押しながら進むので、薄い身ほど断面が荒れやすくなります。

その点、柳刃包丁は片刃で刃渡りも長く、薄い身を一度の引きで切り終えやすいのが魅力です。家庭用なら刃渡り24cm前後から試しやすく、慣れてきたら27cmクラスを検討する人もいます。なお、プロがフグの薄造りに使う「フグ引き」という専用の包丁もありますが、家庭でヒラメを楽しむなら柳刃包丁で十分でしょう。

ヒラメを年に数回食べる程度なら、よく研いだ三徳包丁で工夫するのもひとつの選択です。一方で、白身の刺身を頻繁に作るなら、柳刃包丁に投資する価値は高いと私は思います。片刃は利き手に合わせた作りになっているので、左利きの人は左利き用を選ぶ必要がある点も覚えておいてください。三徳包丁と柳刃包丁の違いをもっと詳しく知りたい人は、刺身は普通の包丁でも切れる?柳刃・三徳の違いと選び方で詳しく解説しています。

砥石とまな板も一緒に見直す

どんなに良い包丁でも、切れ味が落ちれば薄造りはうまくいきません。そこで一緒にそろえておきたいのが砥石です。日ごろの手入れには中砥(1000番前後)が一般的で、仕上げ砥を加えると刃先がよりなめらかになります。片刃の柳刃包丁は、表の刃を研いだあとに裏側を平らな砥石へベタ当てして、刃先のめくれ(カエリ)を取る「裏押し」が大切。裏側を研ぎすぎると片刃の良さが失われるので、軽く数回にとどめるのが基本です。

まな板も意外と見落としがちなポイント。ヒラメの柵は幅が広く、柳刃包丁は刃渡りが長いので、小さなまな板だと包丁を十分に引ききれません。魚用には、長さ40cm前後の余裕のあるまな板を用意すると作業が楽になります。魚のにおいや汚れが気になるなら、肉や野菜とは分けて使うのもいいですね。

包丁や砥石の価格、仕様は商品によってさまざまです。購入前には、メーカーや販売店の公式サイトで刃渡りや鋼材、左右の刃付けなどを確認し、分からない点はお店の人や包丁の専門店に相談してみてください。

◆しのいちのワンポイントアドバイス

私の包丁は研屋さんから買ったもので、今もその三徳包丁を使っています。刃物を扱う人から直接買えると、手入れのことも聞けて安心なんですよね。近くに研ぎのお店や出張の研屋さんがあるなら、包丁選びや研ぎ方について一度相談してみるのもおすすめです。

ヒラメの刺身の切り方に関するよくある質問(FAQ)

Q1. ヒラメの刺身は平造りにしてもいいですか?

A. 平造りにしてはいけないわけではありません。ただ、ヒラメは身が締まっているので、厚く切ると噛み切りにくく感じやすいです。平造りにするなら、マグロより薄めを意識すると食べやすくなりますよ。身のしっかりした食感を楽しみたいときに試してみるのもいいと思います。

Q2. スーパーの皮付きのヒラメの柵はどうすればいいですか?

A. 皮付きの柵は、刺身にする前に皮を引いておくのが一般的です。皮を下にして置き、包丁をまな板とほぼ平行に構えたまま、皮のほうを左右に揺らしながら引っ張ると、身を削りすぎずにはがせます。えんがわが付いていれば、皮を引く前後どちらかで本体の身と切り分けておきましょう。

Q3. 買ってきたヒラメの柵はすぐ切ったほうがいいですか?

A. 柵のまま冷蔵しておき、食べる直前に切るのがおすすめです。とくに薄造りは空気に触れる面が広く、切ってから時間がたつと乾いたり風味が落ちたりしやすいので注意してください。消費期限は商品ごとに違うため、パッケージの表示を必ず確認し、早めに食べきるようにしましょう。

Q4. えんがわだけを売っている場合も同じ切り方でいいですか?

A. 基本的には同じで、包丁を斜めに入れて薄めにそぎ切りにすると食べやすくなります。大ぶりのえんがわはカレイの仲間のものの場合も多く、ヒラメより脂が多くやわらかめなので、少し厚めに切っても大丈夫なことがあります。一切れ食べてみて、好みの厚みに調整してみてください。

Q5. 薄造りがどうしても破れてしまうのはなぜですか?

A. 多くの場合、包丁の切れ味が落ちているか、途中で包丁を前後に動かしているのが原因です。刃元から刃先まで一方向に長く引き切ること、そして包丁をこまめに研ぐことを意識してみてください。最初は3mm前後の少し厚めから始めて、慣れてきたら少しずつ薄くしていくと失敗が減りますよ。

まとめ

ヒラメの刺身は、身の締まりを活かして薄く広く切るそぎ切り・薄造りが主役です。厚く切るより、繊維を短く断って断面を広げたほうが、白身の甘みと心地よい歯ごたえを感じやすくなります。最後にポイントを振り返っておきましょう。

  • ヒラメは五枚おろしで背側と腹側の柵が取れ、腹骨や小骨は切る前に取っておく
  • そぎ切り・薄造りは、厚い方を奥・皮目側を上にして置き、右利きなら左端から切る
  • そぎ切りは3〜5mm、薄造りは2〜3mm前後がひとつの目安で、刃元から刃先まで一方向に引き切る
  • えんがわは本体の身から切り離し、斜めに薄くそいで筋を短く断つと食べやすい
  • 昆布締めで旨味が増す一方、生食時の食中毒の注意点は公式情報で確認しておく
  • 薄く切るほど切れ味と刃渡りの差が出るので、頻繁に作るなら柳刃包丁と砥石を見直す価値がある

ここで紹介した厚みや時間は、あくまで一般的な目安です。魚の状態や好みによって変わるので、実際に食べ比べながら自分なりのちょうどいい切り方を見つけてみてください。食の安全や道具選びで迷ったときは、公式サイトの情報を確認したり、お店や専門家に相談したりするのが確実ですよ。

私もまだまだ勉強中ですが、少しずつ切り方を覚えていくのも刺身の楽しみのひとつ。次にヒラメの柵を見かけたら、ぜひそぎ切りと薄造り、そしてえんがわまで試してみてくださいね。

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