刺身の切り方の基本|柵の向き・右左・厚みを初心者向けに解説

こんにちは、暮らし比較ナビのしのいちです。

晩酌の日にスーパーで刺身の柵を買ってくることがよくあります。ただ、正直に言うと、私の切り方はずっと適当でした。YouTubeで刺身の切り方を見ても、柵を縦に置いているのか横に置いているのか、右から切っているのか左から切っているのか、それすらよく分からなかったんです。

うまく切れた日は、それだけでちょっと嬉しくなります。多少ガタガタでも刺身はおいしいので、それはそれで満足。けど、同じ柵でも切り方で口当たりや味の感じ方が変わるのは、なんとなく分かる気がするんですよね。

そこで今回は、「柵をどっち向きに置くか」「右と左のどちらから切るか」「どのくらいの厚さにするか」という、初心者が最初につまずくところに絞って、刺身の切り方の基本を書きました。私自身、これから少しずつ身につけたいと思っている段階です。仕組みさえ分かれば、動画を見たときにも「今どこから、どう切っているのか」が読み取りやすくなるはずですよ。

この記事でわかること
  • 刺身の柵を置く向きと高い方の位置
  • 右利きと左利きで変わる切り始めの位置
  • 平造りとそぎ造りの厚さの目安
  • 三徳包丁から柳刃包丁へ替えるタイミング

刺身の切り方の基本は筋目と引き切り

柵の向きや左右の話に入る前に、刺身をきれいに切るための大前提を押さえておきましょう。ここが分かると、「高い方を奥に置く」「右から切る」といったルールにも、ちゃんと理由があると納得できるかと思います。

マグロや白身魚などを食べやすい大きさに切った刺身の盛り合わせ

マグロや白身魚、光り物などを盛り合わせた刺身。大葉やきゅうり、わさびも添えています

身が潰れる原因は包丁の前後運動

刺身がうまく切れないとき、一番多い原因は包丁の動かし方です。パンやお肉を切るように、包丁を前後にギコギコ動かしていませんか?

魚の身はとても柔らかく、細かい筋肉の繊維や細胞が集まってできています。包丁を押したり引いたりを繰り返すと、刃が通るたびにこの細胞が潰れてしまうんです。すると、中に閉じ込められていた水分と旨味が「ドリップ」として外に流れ出ます。

ドリップが出た刺身は、旨味が抜けるだけでなく、身がパサついたり生臭さを感じやすくなったりします。さらに、断面がザラザラになるので醤油が必要以上にしみ込み、魚そのものの味が分かりにくくなるのも困りどころ。

反対に、よく切れる包丁の刃渡りを使って、一方向にスッと引いて切ると、細胞をあまり潰さずに切り離せます。切り口の角がピシッと立ち、表面につやが出るのは、この引き切りができている証拠ですよ。お店の刺身がきれいに光って見えるのは、鮮度だけでなく切り方の差も大きいのかもしれません。

刺身を切るときの3つの約束

押しつけない、前後に往復させない、刃元から刃先まで一方向に引く。この3つを守るだけで、切り口の見た目と口当たりはかなり変わります。

筋目に対して直角に刃を入れる

もう1つの大前提が「筋目」です。マグロやサーモンの柵をよく見ると、白っぽい線が斜めに何本も入っているのが分かるかと思います。これが筋肉の繊維の境目で、刺身の世界では筋目と呼ばれています。

刺身を切るときは、この筋目に対して直角に近い角度で刃を入れるのが基本です。繊維を断ち切るように切れば、口に入れたときに筋っぽさが残らず、なめらかで歯切れのいい食感になります。

例えるなら、細い糸を束ねたものを思い浮かべてください。束を横からスパッと切れば断面はきれいにそろいますが、糸に沿って縦に刃を入れると、途中で糸に引っぱられてバラバラにほどけてしまいますよね。刺身も同じで、筋目と平行に刃を入れると身がぐずっと崩れやすく、食べたときにも筋が歯に残りがちです。

つまり、柵の向きや切る方向のルールは、ほとんどが「筋目をきれいに断つ」「身を潰さずに引き切る」ためにあるということ。この2つを頭に置いたまま、次の置き方の話へ進みましょう。

刺身の柵の向きと高い方の置き方

ここからは、まな板に柵を置くときの向きについてです。「縦なのか横なのか分からない」という私のような人は、まず高い方と筋目の2点だけ見ればOK。順番に説明していきますね。

高い方を奥にして横長に置く

スーパーで売っている柵の断面を横から見ると、多くは台形や三角形に近い形をしています。片側が高く(厚く)、反対側が低く(薄く)なっているはずです。

平造りで切るときは、柵を横長に置き、高い方を奥(向こう側)、低い方を手前にするのが基本。まな板の手前の縁と柵が平行になるように置いてください。

なぜ高い方を奥にするのかというと、包丁は奥から手前に向かって引くからです。刃がまず厚い部分に入り、そのまま薄い部分へ抜けていくので、切り終わりまで刃の通り道が安定します。逆に薄い方を奥にすると、最後に厚い部分で刃が止まりやすく、つい押したくなってしまうんですよ。

あわせて、柵の平らな面を下にしてぐらつかないように置くことも忘れずに。まな板の下に固く絞った濡れ布巾を敷いておくと、まな板自体がずれにくくなります。皮付きのカツオのたたきや、皮目を湯引きした白身の柵は、皮を上にして置くのが一般的です。

筋目の向きを見て柵を置き直す

次に筋目を確認しましょう。右利きの人が柵の右端から平造りで切る場合、筋目が左下から右上へ上がっていく「右肩上がり」に見える向きで置くのが基本とされています。この向きなら、まっすぐ包丁を下ろしたときに筋目を斜めに断ち切る形になり、切り口に筋が残りにくくなります。

とはいえ、柵の形によっては、高い方を奥にしたまま筋目の向きをぴったり合わせられないこともあります。そんなときは、筋目と刃の線が平行にならないことを最優先にしてください。包丁を入れる角度をほんの少し斜めにして、筋目と交わるように調整するだけでも、食感はかなり変わるかと思います。

筋目で柵の良し悪しも分かる

マグロの場合、筋目が平行か、ゆるやかな斜めにそろって入っている柵は、筋が口に残りにくく刺身向きといわれています。反対に、筋が半円を描いていたりV字になっていたり、間隔がとても狭かったりする柵は、筋が硬めの部位であることが多いです。そういう柵は、細かく叩いたり漬けにしたりすると食べやすくなりますよ。

刺身は右から切る?左から切る?

私が動画を見ていて一番混乱したのがここでした。実は「右から」「左から」は、切り方の種類と利き手によって変わります。理由と一緒に覚えてしまえば、もう迷わないはずです。

右利きの平造りは柵の右端から

右利きの人がマグロやカツオを平造りにするなら、柵の右端から切り始めるのが基本です。

その理由は、刺身包丁の形にあります。一般的な刺身包丁(柳刃包丁)は片刃といって、刃の傾斜が片側にだけ付いています。右利き用なら、傾斜は包丁を持ったときの右側の面です。

右端から切ると、切り離した一切れは包丁の右側、つまり傾斜のある面の側にあります。刃が進むにつれて、この傾斜が切り身を右へ自然に押し出してくれるので、まな板に残る柵本体の断面には余計な力がかかりにくいんです。結果として、残った柵の切り口もきれいなまま次の一切れへ進めます。

家庭用の三徳包丁は両側に傾斜がある両刃ですが、それでも右利きなら右端から切るほうが手の動きに無理がありません。切った身を右へ送って並べていく流れも作りやすいですよ。

そぎ造りは左端から包丁を寝かせる

一方、タイやヒラメなど身の締まった白身魚でよく使うそぎ造りは、右利きなら柵の左端から切るのが一般的です。

そぎ造りは、包丁を立てずに斜めに寝かせ、身を薄く削ぐように引いて切ります。右手で包丁を寝かせたときに手首の角度を保ちやすく、削いだ一切れを左手ですぐ受け取れるのが、左端から切るほうの形。左手の指先を身に軽く添えておき、切れた身をそのままつまんで左側へ並べていきます。

このように、右利きの場合「平造りは右から、そぎ造りは左から」と覚えておくと分かりやすいかと思います。動画で切り始めの位置が違って見えたのは、切り方の種類が違っていたからなんですね。

左利きは左右をそのまま反対に

左利きの人は、ここまでの話を鏡に映したように反対にして考えればOKです。平造りは柵の左端から、そぎ造りは右端から。筋目の向きも左右反対の「左肩上がり」を目安にしてみてください。

ただし、注意したいのは包丁です。片刃の刺身包丁には、右利き用と左利き用があります。右利き用の片刃を左手で使うと、傾斜が柵本体のほうを向いてしまい、刃が内側へ逃げてまっすぐ切ること自体がむずかしくなります。左利きの人が刺身包丁を買うなら、左利き用を選んでください。

左利き用は作る手間が増えるぶん、右利き用より割高になることが多いといわれています。価格や在庫はメーカーや販売店によって違うので、購入前に公式サイトや販売店で確認しておくと安心です。なお、三徳包丁のような両刃なら、左右どちらの手でも使えますよ。

刺身の厚さの目安と切り方の違い

向きと方向が決まったら、次は厚さです。刺身は魚の種類や身の硬さによって、ちょうどいい厚さが変わります。ここで挙げる数字は、あくまで一般的な目安として参考にしてください。

平造りは包丁を立てて厚めに引く

マグロ、カツオ、ブリ、サーモンのように、身が柔らかく厚みのある魚は平造りが向いています。包丁をまな板に対してまっすぐ立て、刃元から刃先まで使って手前に引き切る、いちばんスタンダードな切り方です。

厚さの目安は8〜12mmほど。家庭で切るなら、まずは1cm前後を狙うと失敗が少ないかと思います。

厚すぎると噛み切りにくく、口の中で持て余してしまいます。反対に薄すぎると、平造りならではの食べごたえがなくなり、盛り付けてもペタンと寝てしまうんですよ。柔らかい魚ほど、ある程度の厚みがあったほうが身の弾力を楽しめます。

白いお皿に盛り付けられた厚切りのカツオのお刺身

厚めに切ったカツオの刺身。柔らかい赤身は厚みがあるほうが食べごたえを感じられます

白身やタコは斜めに削いで薄く

タイ、ヒラメ、イサキなど、身がキュッと締まった白身魚を平造りの厚さで切ると、硬くて噛み切りにくくなります。そこで使うのが、包丁を寝かせて斜めに削ぐそぎ造りです。

そぎ造りの厚さは3〜7mmほどが目安。斜めに切るぶん断面が広くなるので、舌に触れる面積が増えて旨味を感じやすくなります。フグやカワハギのように身の弾力がとくにある魚は、皿の柄が透けるくらいの2〜3mmの薄造りにするのが定番ですね。

タコも、厚く切ると噛むのに苦労します。包丁を少し寝かせて、波打つように薄めに削ぐと食べやすくなりますよ。

白いお皿にたっぷりと盛り付けられた皮付き白身魚(イサキ)の刺身

皮付きの白身魚の刺身。身の締まった白身は、薄めに削ぐと食べやすくなります

大葉の上に盛り付けられたスライスされたタコのお刺身

大葉の上に盛り付けたタコの刺身。噛みごたえのあるタコは薄めに切るのがおすすめです

脂の乗りで厚さを少し変える

同じ魚でも、脂の乗り具合で厚さを変えるとさらにおいしく食べられます。

マグロの赤身のように脂が少なくさっぱりした部位は、やや厚めに切って身の弾力を味わうのがおすすめ。一方で、トロやサーモン、ブリの腹身のように脂がたっぷりの部位は、6〜7mmとやや薄めに切ると、口の中で脂がほどよく溶けてしつこさを感じにくくなります。

「厚ければ豪華」というわけではないんですね。あなたが普段買う柵は、赤身寄りでしょうか、それとも脂の乗ったタイプでしょうか。1〜2mmの差ですが、意識してみると味の感じ方が変わるはずです。

ブリの刺身を厚めに切り、大皿にきれいに盛り付けた様子

厚めに切ったブリの刺身を大皿に並べた盛り付け。木の芽を添えています

切り方ごとの厚さと包丁の角度の目安

切り方向いている魚厚さの目安包丁の角度右利きの切り始め
平造りマグロ、カツオ、ブリ、サーモン約8〜12mmまっすぐ立てる柵の右端
そぎ造りタイ、ヒラメ、イサキ約3〜7mm斜めに寝かせる柵の左端
薄造りフグ、ヒラメ、カワハギ約2〜3mmさらに寝かせる柵の左端
脂の多い部位トロ、サーモン、ブリの腹身約6〜7mm切り方に合わせる切り方に合わせる

※数値はあくまで一般的な目安です。魚の状態や好みに合わせて調整してください。

初心者でもきれいに切れる柵の切り方手順

ここまでの基本を、実際に柵を切る流れに沿って並べてみます。準備から最後の端の処理まで、一つずつ確認していきましょう。

切る前に水気を拭いて冷やしておく

まずは下準備です。パックから出した柵の表面には、ドリップや水分が付いていることが多いので、キッチンペーパーで軽く押さえるようにして拭き取ってください。こするのではなく、そっと押さえるのがコツ。表面の水分がなくなると、包丁が滑りにくくなり、生臭さも抑えられます。

そして、柵は切る直前まで冷蔵庫でしっかり冷やしておきましょう。冷えた身は締まっていて形が崩れにくく、切りやすいんです。常温に長く置いて柔らかくなると、包丁を当てただけでつぶれやすくなってしまいます。

まな板と包丁も、使う前にさっと水で濡らして拭いておくと、身がくっつきにくくなります。もちろん、包丁はよく切れる状態にしておくのが大前提。切れない包丁では、どれだけ正しく動かしても身は潰れてしまいます。

刃元を当てて刃先まで一気に引く

いよいよ切ります。右利きで平造りにする場合の流れを見ていきましょう。

まず、左手の指先を柵の上に軽く添えます。押さえつけるのではなく、柵が動かない程度に触れているだけで大丈夫です。次に、包丁の刃元(持ち手に近い部分)を、柵の右端から狙った厚さの位置、奥側の角に当ててください。

そこから、力を入れずに、包丁の重さで自然に刃が下りていくのに任せながら、手前へ長く一気に引きます。刃元から刃先まで、刃渡りをたっぷり使うイメージです。上から押し切ろうとしないことが、いちばん大事なポイントかもしれません。

一回で切り離せなかったときは、包丁で身を押さないようにそっと奥へ戻し、もう一度同じ方向に引いてください。前後にギコギコ往復させるのとは違い、「引く動作を繰り返す」感覚です。

何切れか切ると、刃に脂や身のかけらが付いてきます。こまめに固く絞った濡れ布巾で刃を拭くと、最後まで同じ切れ味で切り進められますよ。

◆しのいちのワンポイントアドバイス

私が適当に切っていたころは、刃の真ん中あたりだけを使って、上から押すように切っていました。今思えば、うまくいかない日が多かったのは当然だったのかも。包丁は「下ろす道具」ではなく「引く道具」と考えると、腕の動かし方がだいぶ変わりますよ。

切った身は右へ送って並べる

平造りでは、切り終わった一切れを包丁に乗せたまま、右側へ運んで倒していきます。刃を少し右へ傾けるようにすると、切り身が刃から離れて自然に寝てくれるはずです。

切った身を順番に少しずつ重ねて並べていくと、断面のつやがそろって見え、あとで皿へ移すのも楽になります。皿に盛るときも、手でつかむより包丁に乗せて運ぶほうが、身の形が崩れにくいですよ。手の温度で脂が溶けるのも防げます。

そぎ造りの場合は反対に、左手で受け取った身を左側へ並べていきます。どちらも、切った身をまな板の上で散らかさず、一定の向きに並べていくことを意識するだけで、仕上がりの見た目がぐっと整いますね。

刺身を一定の厚さに切って皿に並べた様子と大皿の刺身盛り

一定の厚さに切った刺身を一列に並べた皿と、大皿の刺身盛り

柵の最後の端が切りにくいときの対処

柵を切り進めていくと、最後に残った部分が小さく薄くなり、ぐらぐらして切りにくくなります。これ、初心者なら誰でも一度は困るところですよね。

左手でしっかり添えられないくらい小さくなったら、無理に同じ平造りで切ろうとしないのが正解です。残りを寝かせてそぎ切りにしたり、細切りにしたりすれば、無理なく食べやすい形にできます。

形がそろわない端の部分は、漬けにしてご飯にのせたり、ネギと合わせて叩いたりするのもおすすめ。最後の一切れまで刺身として並べることにこだわらず、別の食べ方に回すと気持ちも楽になりますよ。

最後の端を切るときは指に注意

柵が小さくなると、添えている左手の指先と刃の距離が近くなります。指が刃の通り道に入っていないか必ず確認し、危ないと感じたら切り方を変えてください。

スーパーの柵やブロックを切るときの注意

家で刺身を食べるとき、多くの人はスーパーで柵やパックを買うかと思います。ここでは、買うときの選び方と、切る前に知っておきたい安全面の話をまとめて紹介します。

パックの刺身より柵を選ぶ理由

すでに切ってあるパックの刺身は、そのまま食べられて便利です。ただ、切り口が多いぶん空気に触れる面積が大きく、時間がたつとドリップが出やすいという弱点もあります。

その点、柵なら食べる直前に自分で切れるので、切り口が新しい状態で食べられます。今回紹介した向きや厚さを試せるのも、柵ならではの楽しみですね。

柵を選ぶときは、パックの底にドリップがたまっていないか、筋目が平行やゆるやかな斜めにそろっているかを見てみてください。身の表面にツヤがあり、角がだれていないものを選ぶと、切ったときの仕上がりもきれいになりやすいです。

パック入りのイサキの刺身とだし巻き卵、冷奴などが並んだ晩酌の食卓

パック入りのイサキの刺身と、だし巻き卵や冷奴を並べた晩酌の食卓

厚いブロックは柵に分けてから

カツオの節やサーモンのブロックなど、大きめのかたまりで買ったときは、いきなり刺身の厚さに切り始めないようにしましょう。

まずは、包丁の刃渡りで一回に引き切れるくらいの幅と高さに切り分けて、扱いやすい柵にします。高さがありすぎると刃が途中で止まりやすく、つい押し切りになってしまうからです。皮や血合いが付いている場合は、この段階で取り除いておくと、あとの作業がスムーズになります。

柵に分けたら、高い方を奥にして横長に置き、筋目を確認してから切り始める。ここからは、ここまでに紹介した手順と同じです。

アニサキスは切り方では防げない

刺身を家で楽しむうえで、どうしても知っておいてほしいのが寄生虫のアニサキスです。サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどに寄生していることがあり、魚の鮮度が落ちると内臓から身へ移動することが知られています。

気をつけたいのは、一般的な料理で使う程度の酢や塩、醤油、わさびではアニサキスは死なないという点です。イカに細かい切り込みを入れたり、細く切ったりすることも、確実な予防にはなりません。家庭でできる対策は、新鮮な魚を選んで丸ごと買ったときは早めに内臓を取り除くこと、内臓を生で食べないこと、そして目で見て確認して取り除くことです。より確実にしたい場合は、-20℃で24時間以上の冷凍や、中心までの十分な加熱が有効とされています(出典:厚生労働省『アニサキスによる食中毒を予防しましょう』)。

体調に異変を感じたら医療機関へ

刺身を食べたあとに、みぞおちの激しい痛みや吐き気などがあった場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診してください。予防方法の最新情報は、厚生労働省など公式サイトで確認し、最終的な判断は医師などの専門家に相談することをおすすめします。

刺身包丁と三徳包丁、どちらで切るべき?

「刺身をきれいに切るには、やっぱり刺身包丁が必要なの?」と気になる人も多いかと思います。私の考えを、実際に使っている包丁の話も交えて書いてみますね。

まずは手持ちの三徳包丁で十分

結論から言うと、刺身を切り始めたばかりなら、手持ちのよく切れる包丁で基本の動きを覚えるところからで十分だと思います。

私が使っているのも、普通の家庭用の三徳包丁です。よく行くスーパーに、数か月に1回、刃物研ぎの方がお店を出してくれるんですが、その研ぎ屋さんが置いていた包丁を買いました。鋼をステンレスで包んだ造りで、鋼だけにとてもよく切れるので重宝しています。

三徳包丁は刃渡りが16〜18cm前後のものが多く、厚みのある柵だと一回の引きで切り離せないこともあります。それでも、よく研いである包丁なら、刃元から刃先まで使って引く、往復させない、という基本は十分に練習できますよ。

◆しのいちのワンポイントアドバイス

鋼が刃の部分に出ている包丁は、よく切れるぶんサビやすいのが難点です。私の包丁も、使ったあとによく洗って水気を拭き取っておかないと、すぐにサビが出てしまいます。サビたからといって大きな問題になるわけではないんですが、刺身を切ったあとは魚の脂や水分が残りやすいので、洗ってすぐ拭く習慣をつけておくと安心ですよ。

柵を買う回数が増えたら柳刃包丁へ

刺身を切るのが楽しくなって、柵を買う回数が増えてきたら、そこで柳刃包丁を検討するのが無駄の少ない流れかなと思います。

柳刃包丁のいちばんの良さは、刃渡りの長さです。長い刃なら、厚みのある柵でも一回の引きで切り離しやすく、身を潰さずに済みます。さらに片刃なので、先ほど説明したとおり柵本体の切り口がきれいに残りやすいのも魅力ですね。

家庭用として選ぶなら、刃渡り21〜24cm前後の柳刃包丁が、まな板やキッチンの広さとも合わせやすいといわれています。もちろん、利き手に合ったものを選ぶのは必須。月に何度も柵を切るようになった、家族や友人に盛り合わせを出す機会が増えた、そんなタイミングが替えどきの目安になるかと思います。

家庭で切った刺身を巻き寿司やカツオの漬けと一緒に食卓へ盛り付けた様子

刺身や巻き寿司、カツオの漬けを並べた家庭の食卓。盛り合わせを作る機会が増えたら、柳刃包丁の出番です

切れ味を保つ研ぎと手入れ

三徳包丁でも柳刃包丁でも、切れ味が落ちてしまえば、きれいな刺身は切れません。刺身の出来は、包丁の手入れで決まると言っても言いすぎではないでしょう。

自分で研ぐなら、まずは#1000前後の中砥石が1本あると、日常の切れ味を取り戻すのに役立ちます。片刃の柳刃包丁の場合、裏側は平らな面をそっと砥石に当てて、表を研いだときに出る金属のめくれを取る程度にとどめるのが基本です。裏側を表と同じように角度をつけて研いでしまうと、片刃の良さが失われてしまうので注意してください。

手軽な包丁研ぎ器も便利ですが、片刃に対応していない製品もあります。使える包丁の種類は、メーカーの公式サイトや説明書で必ず確認してください。自分で研ぐのが不安なら、私のように研ぎ屋さんに任せるのも立派な選択肢ですよ。

まな板も見直してみる価値があります。柵を横長に置いて刃渡りいっぱいに引くには、ある程度の奥行きと幅が必要です。魚を切るのに十分な大きさのまな板があると、柵の向きを調整しやすく、作業にゆとりが生まれます。

刺身の切り方を上達させる練習のコツ

基本が分かっても、最初から思いどおりに切れるわけではありません。私自身もまだまだ練習中です。ここでは、少しずつ上達するための見方と練習の仕方を紹介します。

動画は3つのポイントだけ見る

刺身の切り方の動画は、プロの手の動きが速く、カメラの角度もいろいろなので、初心者にはどこを見ればいいのか分かりにくいものです。私が縦か横かも分からなかったのは、画面全体をぼんやり見ていたからかもしれません。

そこで、動画を見るときは次の3つだけに注目してみてください。1つ目は、柵の高い方が奥と手前のどちらにあるか。2つ目は、柵の右端と左端のどちらから切り始めているか。3つ目は、包丁を立てているか寝かせているか、そして切った身をどちらへ送っているかです。

この3点が分かれば、その動画が平造りなのか、そぎ造りなのかも見分けられます。カメラが反対側から撮っていると左右が逆に見えることもあるので、まな板と料理人の体の位置関係もあわせて確認すると、混乱しにくくなりますよ。

同じ柵で厚さをそろえる練習

実際の練習は、手に入りやすく値段も手ごろなサーモンやカツオの柵がおすすめです。身が柔らかすぎず、平造りの基本を試しやすいからです。

練習のときは、「今日は1cm」と厚さを1つ決めて、柵の端から最後まで同じ厚さを目指して切ってみてください。切り終わったら一列に並べて、厚さのばらつきを見比べます。厚さがそろわない原因の多くは、包丁が途中で傾いていることです。刃がまな板に対してまっすぐ下りているか、切るたびに確認してみましょう。

毎回うまくいかなくても、刺身はおいしく食べられます。気楽に続けていれば、きれいに並んだ日の嬉しさはひとしおですよ。

白いお皿に綺麗に並べられたブリのお刺身

長方形の皿に等間隔で並べたブリの刺身。厚さがそろうと、並べたときの見た目も整います

◆しのいちのワンポイントアドバイス

切り方で味が変わるのは分かる気がする、というのが私の正直な感想です。だからこそ、完璧を目指すより「今日は向きだけ気をつける」「次は厚さをそろえてみる」と、1回に1つずつ試すくらいがちょうどいいかなと思っています。あなたも、次に柵を買ったときに1つだけ意識してみてはいかがでしょうか。

刺身の切り方に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 刺身の柵は皮があった側を上にして切りますか?

A. 皮付きのカツオのたたきや、皮目を湯引きした白身の柵は、皮を上にして切るのが一般的です。皮を引いてある柵の場合は、まずぐらつかない平らな面を下にし、高い方を奥にして置くことを優先してください。そのうえで、筋目と刃が平行にならない向きに調整すると切りやすくなります。

Q2. 三徳包丁で一回で切れないときはどうすればいいですか?

A. 前後にギコギコ往復させるのではなく、包丁で身を押さないようにそっと奥へ戻し、もう一度同じ方向に手前へ引いてください。何度引いても切れない場合は、包丁の切れ味が落ちている可能性があります。研いでから切るか、柵の高さを低く切り分けてから切ると、刃が通りやすくなりますよ。

Q3. 刺身の筋目がよく見えない柵はどう切ればいいですか?

A. 白身魚など筋目が見えにくい柵は、身の表面を斜めから光に当てると、うっすら線が見えることがあります。それでも分からない場合は、高い方を奥にして横長に置き、柵の長い辺に対して直角に切れば大きく外すことはありません。数切れ切ったところで断面を見て、筋が引っかかるようなら包丁の角度を少し斜めにしてみてください。

Q4. 刺身は切ってからどのくらい置いておけますか?

A. 切り口からドリップが出て味も鮮度も落ちていくので、刺身はできるだけ食べる直前に切り、切ったら早めに食べるのがおすすめです。すぐに食べない場合はラップをして冷蔵庫に入れ、パックに表示された消費期限を必ず守ってください。保存の可否に迷うときは、購入した販売店に確認すると安心です。

Q5. 左利きでも右利き用の刺身包丁で切れますか?

A. 右利き用の片刃包丁を左手で使うと、刃が内側へ逃げてまっすぐ切りにくくなるため、刺身包丁は左利き用を選ぶのが基本です。三徳包丁のような両刃なら左右どちらの手でも使えるので、まずは両刃で練習し、柳刃包丁を買うときに左利き用を探す流れがいいかと思います。対応する商品はメーカーの公式サイトで確認してください。

刺身の切り方の基本まとめ

最後に、この記事で紹介した刺身の切り方の基本を振り返っておきます。柵を切る前に、ここだけ見直してもらえれば十分ですよ。

  • 刺身は押さず往復させず、刃元から刃先まで一方向に引き切る
  • 筋目と刃が平行にならないよう、直角に近い角度で刃を入れる
  • 柵は横長に置き、高い方を奥、低い方を手前にする
  • 右利きの平造りは右端から、そぎ造りは左端から切る
  • 左利きは左右を反対にし、片刃は左利き用を選ぶ
  • 平造りは約8〜12mm、そぎ造りは約3〜7mmが一般的な目安
  • アニサキスは切り方や調味料では防げないため、目視確認や冷凍などで対策する
  • まずは手持ちのよく切れる包丁で練習し、柵を切る機会が増えたら柳刃包丁を検討する

刺身の切り方は、向きや左右のルールを丸暗記するより、「筋目を断つ」「身を潰さずに引く」という2つの理由を知っておくほうが、ずっと応用がききます。理由が分かっていれば、初めて見る柵でも、どう置いてどこから切ればいいか自分で判断できるようになるはずです。

道具は、いきなり高い包丁をそろえる必要はありません。手持ちの包丁をよく研いで基本の動きを覚え、刺身を切る楽しさが増えてきたら、長い刃で一度に引ける柳刃包丁へ替える。私はこの順番がいちばん無駄が少ないと考えています。

なお、包丁の仕様や価格は商品ごとに違うので、正確な情報は各メーカーの公式サイトをご確認ください。また、生魚の安全性や体調に関わることは、最終的な判断を医師や保健所などの専門家に相談するようにしてくださいね。

うまく切れた日も、ちょっと失敗した日も、刺身はやっぱりおいしいもの。次の晩酌では、柵の向きを一度だけ確かめてから包丁を入れてみてはいかがでしょうか。

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