刺身の切り方は何種類?平造り・そぎ切り・薄造りの使い分け

こんにちは、暮らし比較ナビのしのいちです。

晩酌のお供に、スーパーで刺身の柵を買ってきて自分で切ることがよくあります。ただ、白状すると、切り方はずっと自己流でした。

YouTubeで板前さんの動画を見ても、どっちが縦でどっちが横なのか、それすら頭に入ってこない。うまくいく日もあれば、身がぐずっと崩れてがっかりする日もあります。

それでも、きれいに切れたときはなんだかとても嬉しいんですよ。うまく切れなくても刺身は美味しいので満足はしています。けど、切り方で口当たりや味が変わるのは、食べていて何となく分かる気がするんです。

そこで今回は、平造り・そぎ切り・薄造りといった刺身の切り方の種類と名前、そして魚ごとの使い分けを、私自身が覚えたいことを中心にまとめてみました。家庭ではまず「平造り」と「そぎ切り」の2つを覚えるだけでも、スーパーの柵ならかなりの種類に対応できるはずです。

この記事でわかること
  • 平造り・そぎ切り・薄造りなど刺身の切り方の名前と種類
  • 切り方ひとつで刺身の口当たりや味が変わる理由
  • マグロやタイ、イカなど魚ごとの切り方の使い分け
  • 家庭で刺身をきれいに切るための包丁や砥石の選び方

刺身の切り方の種類と名前の一覧

刺身の切り方には、じつはたくさんの名前があります。ここでは家庭でよく使う基本の切り方から、見た目や食べやすさを工夫した飾り包丁まで、一覧でざっと見ていきましょう。

よく使う刺身の切り方と名称

刺身の切り方は、大きく分けると「基本の造り」と「応用・飾りの造り」の2つです。お店や料理本によって呼び方が少しずつ違うのですが、よく目にする名称を表にしてみました。

切り方の名称向いている魚厚さの目安特徴
平造り(ひらづくり)マグロ、カツオ、ブリ、サーモン約8〜12mm刃をまっすぐ下ろして引き切る。身の弾力と食べごたえを味わえる基本の切り方
そぎ造り(そぎ切り)タイ、ヒラメ、スズキ約3〜7mm包丁を寝かせて削ぐように切る。断面が広く、締まった白身でも食べやすい
薄造り(うすづくり)フグ、ヒラメ、カワハギ約2〜3mmそぎ造りをさらに薄くしたもの。皿の柄が透けるほど薄く引く
細造り(糸造り)イカ、サヨリ、キス幅約1〜5mm細長く切り分ける。醤油や薬味が絡みやすく、和え物にも向く
角造り(かくづくり)マグロ、カツオ約1.5cm角サイコロ状に切る。山かけや漬けなど調味料となじませたいときに
八重造り(やえづくり)アジ、サバ、カツオ平造りと同程度一切れの途中に切り込みを入れる。皮付きの魚も噛み切りやすくなる
鹿の子造り(かのこづくり)イカ、赤貝、皮付きの魚―表面に格子状の切り込みを入れる飾り包丁。醤油の含みが良くなる
焼き霜・湯霜造りタイ、イサキ―皮目だけに熱を加えてから切る。皮ごと美味しく食べられる

厚さの数字は、あくまで一般的な目安です。魚の大きさや鮮度、好みで変えてかまいません。

ちなみに、「そぎ切り」と「そぎ造り」は基本的に同じ切り方を指しています。料理の世界では刺身を「造る」と言うので「〜造り」、家庭料理の本では「〜切り」と書かれることが多い、くらいに考えておけば十分です。

種類が多くて覚えきれないと感じたかもしれません。でも大丈夫。毎日の晩酌で使うのは、この中のごく一部ですよ。

マグロや白身魚、光り物など複数種類を切り分けた刺身の盛り合わせ
マグロや白身魚、光り物を切り分けて盛り合わせた一皿

基本の造りと飾り包丁の違い

平造り、そぎ造り、薄造り、細造り、角造りの5つは「基本の造り」と呼ばれます。魚の身質に合わせて厚みと形を変える切り方で、目的はその魚をいちばん美味しく食べられる形にすること。

一方、鹿の子造りや松笠造り、鳴門造りなどは「飾り包丁」の仲間になります。身に切り込みを入れたり、巻いたりして見た目を華やかにする技法ですが、飾りだけが目的ではありません。

例えば、イカに格子状の切り込みを入れると、硬い身が噛み切りやすくなり、醤油もよく絡みます。つまり、飾り包丁は見た目と食べやすさを同時に良くするための工夫なんです。

松笠造りは、斜めに格子の切り込みを入れてから熱を加える技法です。加熱すると身が反り返って松ぼっくりのような形になるため、湯霜造りや焼き物で使われます。生の刺身というより、ひと手間加えた料理向けの切り方と覚えておくと分かりやすいかも。

家庭でいきなり飾り包丁に挑戦する必要はありません。まずは基本の造りから慣れていき、余裕が出てきたら少しずつ試してみるのが近道でしょう。

刺身の切り方で味が変わる理由

同じ柵を切っても、切り方しだいで舌ざわりや旨味の感じ方がガラッと変わります。なぜそうなるのか、包丁と魚の身の関係から見ていきます。

筋目に対して直角に刃を入れる

魚の身をよく見ると、白っぽい線が何本も入っているのが分かります。これが筋目、つまり筋肉の繊維の向き。刺身を切るときのいちばんの基本は、この筋目に対して直角に刃を入れることです。

繊維を断ち切るように切ると、口に入れたときに筋っぽさが残らず、なめらかで歯切れのいい食感になります。反対に、筋目と同じ方向に刃を入れてしまうと、繊維に引っ張られて身が崩れやすくなるうえ、噛んだときにいつまでも筋が口に残ってしまいます。

マグロの柵を右利きで平造りにする場合は、筋目が左下から右上に向かう、右肩上がりの向きに置くのがセオリー。こうすると、刃をまっすぐ下ろすだけで繊維と直角になります。

私が「縦だか横だか分からない」と混乱していたのは、たぶん柵の形ばかり見て、筋目を見ていなかったからだと思います。形ではなく、筋の向きを基準にする。そう考えるだけで、ずいぶん迷いが減りました。あなたも次に柵を切るとき、まず筋目を探してみてください。

押したり引いたりせず一方向に引く

もう1つ大切なのが、包丁の動かし方です。パンを切るようにノコギリみたいに前後に動かすと、身の細胞がつぶれて「ドリップ」と呼ばれる水分が出てきます。

ドリップには魚の旨味や水分がたっぷり含まれていて、これが流れ出ると、身がパサついたり生臭さを感じやすくなったりします。せっかくの刺身なのに、もったいない話です。

そこで意識したいのが「引き切り」。包丁の刃元(持ち手に近い部分)を身に当て、刃先に向かって手前へスーッと一度で引き切ります。刃渡りを長く使うほど、身をつぶさずに切れるわけです。

上手に引き切った刺身は、切り口の角がピシッと立ち、表面にツヤが出ます。切り口がなめらかだと醤油が染み込みすぎず、魚本来の味と食感を楽しめるのもうれしいところ。

刺身を切るときのコツは3つ

筋目に対して直角に刃を入れる。刃元から刃先まで使って一方向に引く。一切れを一度で切り離す。この3つを守るだけで、見た目も口当たりもかなり変わりますよ。

◆しのいちのワンポイントアドバイス

私が普段使っているのは、柳刃包丁ではなく家庭用の三徳包丁です。よく行くスーパーに数ヶ月に1回、刃物研ぎの方がお店を出してくれていて、その研屋さんが置いていた包丁を買いました。鋼をステンレスで挟んだタイプで、鋼だけにとてもよく切れます。切れる包丁で一方向に引くと、身がつぶれにくいのを実感しますね。

平造りの切り方と向いている魚

平造りは、刺身の切り方の中でいちばんスタンダードな方法です。マグロやカツオ、ブリ、サーモンなど、スーパーでよく見かける柵の多くはこの切り方で美味しく食べられます。

平造りの手順と厚さの目安

平造りに向いているのは、身がやわらかくて厚みのある赤身魚や青魚。手順自体はシンプルなので、ここで流れをつかんでおきましょう。

まず、柵をキッチンペーパーで軽く押さえて表面の水気を拭き取ります。次に、柵の厚い方を奥、薄い方を手前にしてまな板に置いてください。このとき、筋目が右肩上がりの向きになっているかも確認しておきます。

右利きなら、柵の右端から切り始めるのが基本。刃元を柵の奥側に当て、筋目に対して直角に刃を入れたら、手前に向かって一気に引き切ります。

切り離した一切れは、包丁の刃に乗せたまま右側へ倒すようにずらして並べていきます。これを繰り返すと、切った刺身が同じ向きにきれいに並び、そのまま盛り付けに移れます。

厚さは約8〜12mmがひとつの目安。指の太さの半分くらい、とイメージすると分かりやすいかもしれません。平造りは身の弾力と食べごたえを味わう切り方なので、薄くしすぎないのがポイントです。

一定の厚さに切りそろえて一列に並べた刺身と大皿の刺身盛り
厚さをそろえて切ると、並べたときの見た目もきれいに仕上がります

脂の乗り具合で厚みを変える

平造りの厚さは、魚の脂の乗り具合によって変えると、さらに美味しくなります。

例えば、マグロの赤身のように脂が少なくさっぱりした部位は、やや厚めに切るのがおすすめ。噛んだときの弾力と、赤身ならではの旨味をしっかり感じられます。

逆に、戻りガツオやサーモン、ブリの腹身など脂がたっぷり乗った部位は、6〜7mmくらいとやや薄めに。口の中で脂がほどよく溶けて、しつこさを感じにくくなります。

同じブリでも、背の方と腹の方で脂の量はかなり違います。腹身は薄くて平べったい形、背身は高さがあって厚みのある形をしていることが多いので、柵の形からもある程度見分けられますよ。

あなたは脂の乗った刺身、厚切りと薄切りのどちらが好みでしょうか。何度か厚みを変えて食べ比べてみると、自分の好きな厚さが見えてくるはずです。

白いお皿に盛り付けた厚切りのカツオの刺身
厚めの平造りにしたカツオは、もっちりした食感を楽しめます

刺身の柵をそぎ切りにする手順

そぎ切りは、包丁を寝かせて身を削ぐように切る方法です。タイやヒラメのように身が締まった白身魚をはじめ、柵の形が不揃いなときにも役立ちます。

そぎ切りの包丁の角度と置き方

そぎ切り(そぎ造り)は、平造りのように刃を真上から下ろすのではなく、包丁を斜めに寝かせて切るのが特徴です。

右利きの場合は、柵の左端から切り始めます。左手の指先で身を軽く押さえ、包丁を右側に傾けて、身に対して浅い角度で刃を入れてください。

刃が入ったら、平造りと同じく刃元から刃先まで使って手前に引き、一切れずつ削ぎ取ります。切った身は左手で受け取って、左側に並べていきましょう。

厚さの目安は約3〜7mm。包丁を寝かせる角度が浅いほど、断面は広く薄くなります。断面が広いと舌に触れる面積が増えるので、身が締まった白身魚でも旨味を感じやすく、食べやすくなるんです。

包丁を寝かせると、刃先が身を押さえている左手の指に近づきます。指先は刃の進む方向に置かず、身の上から軽く押さえる程度にしてください。慣れないうちは、ゆっくり引くほうが安全です。

平造りとそぎ切りの違い

平造りとそぎ切りの違いをひと言で言うと、「包丁を立てるか、寝かせるか」です。

平造りは刃をまっすぐ下ろして切るので、断面が四角く、厚みのある一切れになります。身がやわらかい赤身魚や青魚を、食べごたえのある形で味わうのに向いています。

一方のそぎ切りは、刃を寝かせて斜めに切るため、薄くて断面の広い一切れに。身が締まった白身魚でも噛み切りやすく、醤油やポン酢もよく絡みます。

また、そぎ切りは柵の形が不揃いでも切りやすいのがいいところ。スーパーの柵で、端のほうが薄くなっていたり、形がいびつだったりする部分は、平造りにするより、そぎ切りにしたほうがきれいに仕上がることが多いです。

厚みのあるやわらかい魚は平造り、締まった白身や薄い部分はそぎ切り。まずはこの基準を持っておけば、どちらで切るか迷う場面はぐっと減るでしょう。

薄造りと細造りの切り方

そぎ切りをさらに薄くしたのが薄造り、細長く切るのが細造りです。どちらも、身の硬さや厚みに合わせて食べやすくするための切り方になります。

薄造りは身の締まった白身魚に

薄造りは、そぎ造りの要領で身をさらに薄く引く切り方です。厚さは約2〜3mmが目安で、上手な人が切ると、お皿の柄が透けて見えるほどになります。

向いているのは、フグやヒラメ、カワハギなど、身にしっかりとした弾力がある白身魚。こうした魚を平造りのように厚く切ると、硬くて噛み切りにくくなってしまいます。薄く引けば、心地よい歯ごたえだけを残しつつ、食べやすくできるわけです。

薄造りは、ポン酢ともみじおろし、ネギなどで食べることが多い料理。身が薄いぶん、ポン酢の酸味や薬味の香りとよくなじみます。

切るときは、皮を引いた面を上にして、包丁を大きく寝かせて引きます。薄く切るには、とにかく包丁の切れ味が大事。刃が鈍いと身が引っかかり、途中でちぎれてしまいます。

正直、私もまだ薄造りをきれいに引ける自信はありません。家庭では、そぎ切りを少し薄めにするくらいから始めてみると、無理なく近づけるかなと思います。

イカやサヨリは細造りで食べやすく

細造りは、身を細長く切り分ける方法で、糸造りとも呼ばれます。幅はおおよそ1〜5mm。とくに細く切ったものを、糸造りと呼び分けることもあります。

向いているのは、イカやサヨリ、キスなど、身が薄くて平造りにしにくい魚介類です。細く切ることで、醤油や薬味が絡みやすくなり、ねっとりしたイカも食べやすくなります。和え物に使いやすい形でもあります。

盛り付けるときは、切った身を平らに並べるのではなく、箸でひとまとめにして折り返すように、こんもり高く盛るのがコツ。ぺたんと寝かせるより、ぐっと見栄えが良くなりますよ。

イカソーメンと呼ばれる料理も、この細造りの仲間です。家でイカの刺身を買ってきたら、半分を細造り、半分を普通の切り方にして食べ比べてみるのも楽しいかもしれません。

八重造りや角造りなど応用の切り方

基本の造りに慣れてきたら、少し手を加えた応用の切り方も試してみたくなるもの。ここでは、家庭でも取り入れやすい八重造り、角造り、鹿の子造り、焼き霜・湯霜造りを紹介します。

八重造りの切り方と向いている魚

八重造りは、平造りの一切れの途中に切り込みを1本入れる切り方です。見た目は2枚が重なっているように見えることから、この名前が付いたと言われています。

やり方は、平造りの要領で、まず一切れ分の厚さの半分くらいのところに、下まで切り離さないように途中まで刃を入れます。次に、そこからさらに半分の位置で刃を最後まで引き、切り離す。これを繰り返すだけです。

向いているのは、アジやサバ、カツオなど、皮付きのまま食べる魚や脂の乗った魚。切り込みがあることで皮や身が噛み切りやすくなり、切れ目に醤油や薬味がなじむので、味にまとまりが出ます。

平造りができれば、あとは「途中で止める」感覚をつかむだけ。止めたつもりが切り離してしまっても、普通の平造りになるだけなので、気軽に試してみてください。

角造りと鹿の子造りの使いどころ

角造りは、平造りの要領で切ったあと、さらにサイコロのような直方体に切り分ける方法です。大きさは約1.5cm角が目安。マグロやカツオなど、やわらかくて厚みのある魚に向いています。

角造りにすると調味料となじみやすくなるので、山かけや漬け丼、ハワイ料理のポキなどにぴったり。器に盛ったときに立体感が出るのもうれしいところです。

鹿の子造りは、身の表面に縦横の細かい格子状の切り込みを入れる飾り包丁。子鹿の背中の模様に似ていることから、この名前が付きました。

イカや赤貝、皮付きの魚などによく使われ、切り込みのおかげで醤油の含みが良くなり、イカの硬さもやわらいで食べやすくなります。切り込みは、包丁を身に対して垂直に下ろし、下まで切り離さない深さで入れるのがポイントです。

皮目を活かす焼き霜と湯霜造り

タイやイサキなど、皮と身の間に旨味がある魚は、皮を引いてしまうのが少しもったいない魚です。そんなときに使うのが、焼き霜造りと湯霜造りでしょう。

焼き霜造りは、皮目をバーナーなどでさっと炙って焼き目を付ける方法。湯霜造りは、皮目に熱湯をかけてすぐに氷水で冷やす方法です。どちらも皮をやわらかくして食べやすくし、香ばしさや臭み消しの効果も期待できます。

熱を加えるのは皮の表面だけで、身はほぼ生のまま。すぐに冷やして、水気をよく拭き取ってから切り分けます。切り方は平造りか、少し厚めのそぎ切りが合わせやすいですよ。

皮目に熱を加えて切り分けた皮付き白身魚の刺身
皮目に熱を加えた白身魚の刺身。皮ごと美味しく食べられます

魚ごとの刺身の切り方の使い分け

ここまで紹介した切り方を、実際の魚に当てはめてみましょう。スーパーでよく見かける魚を中心に、どの切り方を選べばいいかを見ていきます。

マグロやカツオ、ブリは平造り

マグロ、カツオ、ブリ、ハマチ、サーモンなど、身がやわらかくて厚みのある魚は、基本的に平造りで大丈夫です。

マグロは赤身なら厚め、中トロや大トロのように脂の多い部位は少し薄めに切ると、それぞれの持ち味を感じやすくなります。柵を選ぶときは、筋が平行か、ゆるやかな斜めに入っているものを選ぶと、口に筋が残りにくくて食べやすいです。

カツオは身がやわらかく崩れやすいので、切れ味のいい包丁で一気に引くのが大切。厚めに切ると、もっちりした食感を楽しめます。

ブリやハマチは、背身と腹身で脂の量がかなり違う魚。背身はやや厚めの平造り、腹身は少し薄めにすると、最後まで飽きずに食べられます。サーモンも同じ考え方で問題ありません。

ブリの刺身を厚めの平造りにして大皿に何列も並べた盛り付け
ブリを厚めの平造りにして、大皿に並べてみました

タイやヒラメは身の硬さで選ぶ

タイやヒラメ、スズキといった白身魚は、赤身魚に比べて身が締まっているのが特徴。そのため、平造りで厚く切ると、硬く感じたり、噛み切りにくかったりすることがあります。

そこで基本になるのが、そぎ切りです。断面を広く薄くすることで、白身魚ならではの上品な旨味を感じやすくなります。

とくに身の締まったヒラメやカワハギ、フグなどは、さらに薄い薄造りにするとより食べやすくなります。一方、タイでも身がやわらかめのものや、厚みのある背の部分なら、少し薄めの平造りでも美味しく食べられるでしょう。

つまり、白身魚は「締まっているほど薄く」が合言葉。同じ魚でも鮮度や大きさによって身の硬さは変わるので、ひと切れ切って食べてみて、厚さを調整するのがいちばん確実です。

イカは縦切りと横切りで食感が変わる

イカは、切る方向によって食感が大きく変わる、ちょっと面白い食材です。

イカの筋肉の繊維は、胴体に対して横方向、つまり輪切りにする方向に走っています。そのため、繊維に沿うように横方向に切ると、繊維がそのまま残って、コリコリとした歯ごたえが楽しめます。

反対に、胴の縦方向(頭から足に向かう方向)に切ると、横に走る繊維を直角に断ち切ることになり、やわらかくて甘みを感じやすい食感に変わります。

身の厚いアオリイカは縦に切ってねっとり感を、身の薄いヤリイカは細造りでさっぱりと、というように、イカの種類や好みで使い分けるといいですよ。あなたはコリコリ派とやわらか派、どちらでしょうか。

イワシやアジは尾側からそぎ切り

イワシやアジ、サンマなどの小型の青魚は、身がやわらかく、小骨が多いのが悩みどころ。

とくにイワシは、包丁で三枚におろすと身が割れやすいので、手開きがおすすめです。頭と内臓を落としたあと、背骨の上に親指を滑り込ませ、身と骨をはがすように開くと、身を崩さずに骨を外せます。

刺身にするときは、尾側から薄めのそぎ切りにするのがコツ。小骨が向いている方向に対して垂直に刃が入るので、残った小骨を細かく断ち切ることができ、口当たりがぐっと良くなります。

アジは皮を引いたあと、平造りや細造り、八重造りなど好みで切り分けてください。脂の乗った時期なら、少し薄めのそぎ切りにすると食べやすいかなと思います。

大葉を敷いた小皿に盛り付けた新鮮なイワシの刺身
大葉の上に盛り付けたイワシの刺身。小骨が気になる魚は薄めのそぎ切りで

家庭で刺身をきれいに切る道具選び

切り方を覚えても、道具が合っていないと思うように切れません。ここでは、刺身をきれいに切るための包丁、砥石、まな板と器について紹介します。

柳刃包丁と三徳包丁の違い

刺身専用の包丁として知られているのが柳刃包丁です。刃渡りが長く細身で、片側だけに刃が付いた「片刃」の構造になっています。

三徳包丁や牛刀は、刃が左右対称に付いた「両刃」。まっすぐ切りやすく、野菜や肉など何でもこなせるのが魅力です。ただ、やわらかい生魚を切ると、切り離す側と残る側の両方の身に力がかかり、身をつぶしやすい面があります。

片刃の柳刃包丁は、刃の傾斜が切り離す一切れ側だけを押しのけるように進みます。そのため、まな板に残る身の断面には余計な力がかかりにくく、切り口がツヤツヤに仕上がるんです。さらに刃渡りが長いので、一度の引き切りで一切れを切り離しやすいのもポイント。

なお、片刃包丁には右利き用と左利き用があります。刃の付いている向きが逆になるので、左利きの人は左利き用を選んでください。左利き用は作るのに手間がかかるため、右利き用より価格が高めに設定されていることが多いです。

とはいえ、三徳包丁で刺身が切れないわけではありません。よく研いだ切れる包丁で、刃元から刃先まで使って一方向に引けば、家庭で食べるには十分きれいに切れますよ。

◆しのいちのワンポイントアドバイス

私の三徳包丁は、鋼をステンレスで挟んだタイプです。切れ味は申し分ないのですが、刃先は鋼がむき出しなので、使ったあとによく洗って水気を拭き取っておかないと、すぐにサビが出てしまいます。サビたからといって大したことはないのですが、刺身包丁を選ぶときは、刃の素材ごとのお手入れの手間も考えておくと、あとで困らないかなと思います。

切れ味を保つ砥石と研ぎ方

刺身をきれいに切るうえで、包丁の切れ味は本当に大事です。どんなにいい包丁でも、切れ味が落ちると身をつぶしてドリップが出てしまいます。そこで用意しておきたいのが砥石。

砥石には、刃こぼれを直す「荒砥石」、普段の研ぎに使う「中砥石」、仕上げ用の「仕上げ砥石」があります。家庭で使うなら、まずは中砥石が1本あれば十分。慣れてきたら仕上げ砥石を足すと、刺身の切り口がさらになめらかになります。

研ぐときは、砥石を水に浸してから、包丁を砥石に対して斜めに置き、刃の角度を一定に保ったまま前後に動かすのが基本。三徳包丁のような両刃なら、表と裏を同じくらいずつ研ぎます。

柳刃包丁のような片刃は、表側の斜めの面(切刃)を砥石にぴったり当てて研ぎ、裏側は平らなまま軽く数回だけ研いで、研いだときに出る金属のめくれ(カエリ)を取ります。この裏側の研ぎを「裏押し」と呼び、角度を付けすぎると片刃の良さが失われてしまうので注意しましょう。

仕上げに刃先をほんの少しだけ立てて数回研ぎ、ごく細い「小刃(糸刃)」を付けると、刃こぼれしにくくなり、切れ味が長持ちします。

研ぎ方は包丁の種類や素材によって変わります。高価な包丁や、自分で研ぐのが不安な包丁は、メーカーの取扱説明書や公式サイトを確認するか、刃物店や研ぎの専門の方に相談するのが安心です。

魚用のまな板と盛り付け皿

刺身を切るときは、まな板選びも意外と大切です。刃当たりのやわらかい木製や合成ゴム製のまな板は、包丁の刃を傷めにくく、切れ味を保ちやすいのがいいところ。

刺身包丁は刃渡りが長いので、まな板も横幅に余裕のあるものが使いやすいです。刃元から刃先まで引き切るには、柵の長さに加えて、包丁を動かすスペースが必要になります。

衛生面では、肉や野菜と魚でまな板を使い分けるか、使うたびによく洗って乾かすのが基本。生で食べる刺身は加熱しないぶん、まな板や包丁の清潔さがそのまま安全につながります。

切った刺身を盛るお皿は、白や黒など無地のものを選ぶと、魚の色がよく映えます。和食では、切り身の数を3切れや5切れなど奇数にすると縁起が良いとされていて、盛り付けのちょっとした目安にもなりますよ。

大葉や大根のツマ、わさびなどを添えると、彩りが良くなるだけでなく、口の中をさっぱりさせてくれる役目も果たしてくれます。

白い長方形のお皿に等間隔で並べたブリの刺身
白い長方形のお皿に並べたブリの刺身。無地の器だと魚の色が映えます

刺身を安全に楽しむための注意点

刺身は生で食べる料理なので、切り方と同じくらい安全への意識が大切です。とくに気をつけたいのが、寄生虫のアニサキスによる食中毒。

アニサキスの幼虫は、サバやアジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類の内臓に寄生していて、魚の鮮度が落ちると内臓から身へ移動することが知られています。

予防の基本は、新鮮な魚を選び、丸ごと買ったときは速やかに内臓を取り除くこと。内臓を生で食べないこと、そして目視でよく確認することも欠かせません。加熱や冷凍も有効で、目安として-20℃で24時間以上の冷凍、または70℃以上、もしくは60℃で1分以上の加熱が示されています(出典:厚生労働省『アニサキスによる食中毒を予防しましょう』)。

ここで気をつけたいのが、一般的な料理で使う程度の酢や塩、醤油、わさびでは、アニサキスの幼虫は死滅しないという点。細造りや鹿の子造りのように細かく包丁を入れても、確実な予防にはなりません。

また、家庭用の冷凍庫は設定温度が-20℃に届かないこともあります。冷凍による予防を重視したいときは、冷凍処理済みと表示された商品を選ぶのもひとつの方法です。

食後に激しい腹痛や吐き気などがあり、アニサキスによる食中毒が疑われるときは、自己判断せずに速やかに医療機関を受診してください。予防方法などの正確な情報は、厚生労働省などの公式サイトをご確認ください。体調に関する最終的な判断は、医師などの専門家に相談しましょう。

刺身の切り方に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 三徳包丁でも刺身はきれいに切れますか?

A. はい、家庭で食べる分には十分きれいに切れます。大切なのは、よく研いで切れ味を保つことと、ノコギリのように前後させず、刃元から刃先まで使って一方向に引き切ることです。切り口のツヤや薄造りの仕上がりまでこだわりたくなったら、片刃の柳刃包丁を検討してみてもいいと思います。

Q2. スーパーで買った刺身の柵は、どの向きに置けばいいですか?

A. 柵の形ではなく、身に入っている筋目の向きを基準にしてください。右利きで平造りにする場合は、厚い方を奥にして、筋目が右肩上がりになるように置くと、刃をまっすぐ下ろすだけで筋目と直角に切れます。そぎ切りの場合は、柵の左端から包丁を寝かせて切り進めるのが一般的です。

Q3. 刺身の厚さはどれくらいが目安ですか?

A. 一般的な目安として、平造りは約8〜12mm、そぎ切りは約3〜7mm、薄造りは約2〜3mmです。さらに、脂の少ない赤身は厚め、脂の乗った腹身などは6〜7mmくらいとやや薄めにすると食べやすくなります。魚の状態や好みでも変わるので、ひと切れ食べてみて調整してみてください。

Q4. サーモンは平造りとそぎ切りのどちらが向いていますか?

A. サーモンは身がやわらかく厚みがあるので、基本は平造りがおすすめです。脂がたっぷり乗った腹側はやや薄めに切ると、しつこさを感じにくくなります。柵の端の薄い部分や形がいびつなところは、そぎ切りにするときれいに仕上がりやすいですよ。

Q5. 左利きでも柳刃包丁は使えますか?

A. 柳刃包丁は片側だけに刃が付いた片刃なので、左利きの人は左利き用を選ぶ必要があります。右利き用を左手で使うと、刃が身の内側に逃げてまっすぐ切りにくくなるためです。左利き用は右利き用より価格が高めのことが多いので、購入前にメーカーの公式サイトや販売店で仕様を確認してください。三徳包丁のような両刃なら、利き手を問わず使えます。

まとめ

刺身の切り方は、見た目を整えるためだけのものではありません。魚の身質に合わせて切り方を選ぶことで、口当たりも旨味の感じ方も変わります。最後に、この記事のポイントを振り返っておきましょう。

  • 刺身の基本の切り方は、平造り・そぎ造り・薄造り・細造り・角造りの5つ
  • 筋目に対して直角に刃を入れ、刃元から刃先まで使って一方向に引き切る
  • 厚みのあるやわらかい魚は平造り、締まった白身はそぎ切りや薄造りが基本
  • 八重造りや鹿の子造りは、皮付きの魚やイカを食べやすくする応用の切り方
  • イカは切る向きで食感が変わり、イワシは尾側からのそぎ切りで小骨が気になりにくい
  • 包丁は切れ味が第一。砥石で手入れし、左利きなら左利き用の片刃を選ぶ
  • アニサキス対策は目視・加熱・冷凍が基本で、酢や切り方では防げない

種類はたくさんありますが、家庭でまず覚えたいのは平造りとそぎ切りの2つ。この2つがあれば、スーパーで手に入る柵のほとんどは美味しく切り分けられます。

私もまだ、うまくいく日とそうでない日がある途中の身です。それでも、筋目を見て、切れる包丁で一方向に引く。これを意識するだけで、以前よりずっと失敗が減りました。

次に刺身の柵を買ってきたら、あなたもぜひ筋目を探すところから始めてみてください。きれいに切れた一切れを口に運ぶときの嬉しさは、なかなかのものですよ。

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