刺身は普通の包丁でも切れる?柳刃・三徳の違いと選び方を解説

こんにちは、暮らし比較ナビのしのいちです。

スーパーで刺身の柵を買ってきて、晩酌の前に自分で切る。この時間が、私はけっこう好きです。

ただ、刺身の切り方はいまだによく分かっていません。YouTubeで板前さんの動画を見ても、縦に切るのか横に切るのか、それすら頭に入ってこない。なので、いつもわりと適当に切っています。

使っているのは柳刃包丁ではなく、普通の三徳包丁です。うまく切れる日もあれば、断面がガタガタになる日もあります。それでも刺身はおいしいので、まあ満足なんですけどね。

とはいえ、切り方で味や食感が変わるのは何となく分かります。そこで今回は、「普通の包丁でも刺身は切れるのか」「柳刃包丁は何が違うのか」を、自分でも学び直すつもりで調べました。三徳包丁で切ってきた私自身の経験と合わせて書いていきます。

左利きの人が気をつけたい刃の向きや、出刃包丁の使いどころにも触れるので、自分に合う一本を選ぶ参考にしてみてください。

この記事でわかること
  • 三徳包丁や牛刀で刺身をきれいに切るコツ
  • 柳刃包丁と普通の包丁の構造と切れ味の違い
  • 筋目に合わせた刺身の基本の切り方
  • 左利きや使用頻度に合わせた包丁の選び方

刺身は三徳包丁や普通の包丁でも切れる

最初に気になるのは、柳刃包丁がないと刺身は切れないのか、という点かなと思います。答えは「切れます」。ただし、いくつか条件があります。この章では、私が普段使っている三徳包丁の話と、普通の包丁で切るときのコツ、そして仕上がりに差が出る理由を見ていきます。

研屋さんで買った三徳包丁で切っています

私が普段使っているのは、ごく普通の家庭用三徳包丁です。よく行くスーパーに、数ヶ月に1回、刃物研ぎの方がお店を出してくれるのですが、そのとき研屋さんが並べていた包丁を買いました。

特徴は、鋼をステンレスで包むように挟んだつくりになっていること。刃先に出ている部分が鋼なので、切れ味はかなりいいです。刺身の柵にも気持ちよく刃が入ってくれるので、重宝しています。

そのかわり、刃先の鋼が出ている部分はサビが出やすいのが難点。使ったあとによく洗って水気を拭いておかないと、すぐにうっすら茶色くなります。錆びたからといって、なんてこともないのですが…。

この包丁で刺身を切ると、うまくいったときは断面がつるっとして、角もきれいに立ちます。一方で、ちょっと気を抜くと身がつぶれたり、切り口がギザギザになったり。同じ包丁でもこれだけ差が出るので、包丁の種類だけでなく、切れ味の保ち方と包丁の動かし方が仕上がりを大きく左右するのかもしれません。

マグロや白身魚、光り物などを食べやすい大きさに切った刺身の盛り合わせ

マグロや白身魚、光り物を盛り合わせ、大葉やきゅうり、わさびを添えた刺身

三徳包丁や牛刀で刺身を切るときのコツ

三徳包丁の刃渡りは16〜18cm前後、牛刀は18〜21cm前後が家庭でよく使われるサイズです(あくまで一般的な目安)。刺身用の柳刃包丁より短いぶん、ちょっとした工夫で仕上がりが変わってきます。

1つ目は、切る前に包丁をしっかり研いでおくこと。切れ味の落ちた刃では、刃が身に入っていかず、押しつぶすような切り方になってしまいます。

2つ目は、前後にゴシゴシ動かさないこと。ノコギリのように押したり引いたりすると、そのたびに身の繊維が傷みます。刃元を柵の奥側に当てて、刃先まで使いきるように手前へ一度で引くのが基本です。

3つ目は、柵をよく冷やしておくこと。冷えた身は締まっているので、刃に引っかかりにくくなります。

それから、1切れ切るごとに固く絞った布巾で刃を拭くのもおすすめ。脂や水分が刃に残ったままだと、次の切り身がくっついて形が崩れやすいんです。

短い刃でも引き切りしやすくする工夫

刃渡りが足りず一度で引ききれないときは、柵を縦に半分に切って幅を狭くしたり、少し薄めに切ったりすると、三徳包丁でも途中で刃を止めずに切りやすくなります。

普通の包丁だと仕上がりに差が出る理由

刺身のおいしさを左右するのは、切り口の細胞がどれだけ傷まずに残っているかです。

切れ味の鈍い刃や、押し引きの往復で切ると、身の繊維や細胞がつぶれて、中の水分が「ドリップ」として流れ出てきます。このドリップには旨味も含まれているので、出れば出るほど味がぼやけ、パサつきや生臭さの原因にもなります。

反対に、よく切れる刃で一方向にスッと引くと、断面がなめらかで艶のある仕上がりに。表面がつるっとしていると醤油が染み込みすぎず、魚本来の食感や風味を感じやすくなるわけです。

つまり、三徳包丁でも「よく研いである」「一方向に引ける」の2つがそろえば、かなりいいところまで切れるということ。けど、刃渡りの短さと、刃の構造だけはどうしても変えられません。ここが柳刃包丁との差になって表れてきます。

柳刃包丁と三徳包丁の違い

柳刃包丁は、見た目こそ細長いだけの包丁に見えるかもしれません。でも実は、刺身をきれいに引くための工夫がつまっています。ここでは刃渡りの長さ、刃のつき方の違い、そして出刃包丁で刺身を切るのはありなのかを解説します。

刃渡りの長さと引き切りのしやすさ

柳刃包丁は刺身を引くための専用の包丁で、家庭向けでも刃渡り21〜27cmくらいのものが一般的です。三徳包丁と比べると、刃が細長く、薄いのが特徴。

なぜ長いのかというと、刃元から刃先までを一回の動きで引ききるためです。刃渡りが長ければ、幅の広い柵でも途中で止まらずに引けます。途中で止まって刃を戻すと、そこで断面に段差ができてしまうんですよ。

例えるなら、長い定規で線を一本引くのと、短い定規を何度もずらしながら線を引くのとの違い。長い定規のほうが、まっすぐきれいな線になりますよね。

また、柳刃包丁は刃幅が狭いので、身と刃が触れる面積が少なく、切った身が刃に張りつきにくいという良さもあります。これも、刺身の形をきれいに保つうえで地味に効いてくるポイントです。

片刃と両刃で刺身の断面が変わる

もう1つの大きな違いが、刃のつき方です。三徳包丁や牛刀は、刃の両面に同じように角度がついた「両刃」。対して柳刃包丁は、表側だけに刃がついた「片刃」で、裏側はほぼ平らになっています(裏には「裏スキ」と呼ばれるわずかなへこみがあります)。

両刃で柔らかい生魚を切ると、刃が左右の身を同じように押し広げながら進みます。そのため、切り離す身だけでなく、まな板に残る側の身にも押す力がかかってしまいます。

一方、片刃で引き切りすると、刃の傾斜が切り離す側の身だけを外へ押しのけていきます。まな板に残る側の断面にはほとんど力がかからないので、鏡のように光る切り口になりやすい。板前さんが片刃の柳刃包丁で刺身を引くのは、こうした理由からです。

包丁の種類刃のつき方刃渡りの目安刺身での使いやすさ
三徳包丁両刃16〜18cm前後たまに柵を切る程度なら十分
牛刀両刃18〜21cm前後三徳より長く、引き切りしやすい
柳刃包丁片刃21〜27cm前後刺身を引くための専用包丁
出刃包丁片刃12〜18cm前後魚をおろす用で刺身には不向き

※刃渡りは一般的な目安で、メーカーや製品によって異なります。

出刃包丁で刺身を切るのはありか

「出刃包丁があるから、それで刺身も切れないかな」と考える人もいるかもしれません。

出刃包丁は、魚の頭を落としたり中骨を断ったりするための包丁で、刃に厚みと重さがあります。三枚おろしにはとても頼りになる一方、厚い刃は身を押し分ける力が大きく、刃渡りも短め。なので刺身を引くと、どうしても断面がガタつきやすくなります。

小さなアジやイワシを少し切る程度なら、出刃包丁でも切れないことはありません。ただ、きれいな刺身を目指すなら、「出刃でおろして、柳刃で引く」という役割分担がいちばん無理がないかなと思います。

ちなみに、イワシのように身がとても柔らかい魚は、包丁を使わずに指で骨から身をはがす「手開き」のほうが身割れしにくいです。刺身にするときは、小骨の向きに対して直角になるよう尾側から薄めにそぎ切りにすると、残った小骨が細かく断たれて口当たりがよくなります。

大葉の上に盛り付けられた新鮮なイワシの刺身

大葉を敷いた小皿に盛り付けたイワシの刺身

刺身の基本の切り方と包丁の動かし方

包丁の違いが分かったところで、次は切り方そのものです。私がずっとつまずいていた「縦か横か問題」の答えから、柳刃包丁での引き切りの手順、魚に合わせた切り方と厚さの目安まで、順番に見ていきましょう。

縦か横かは筋目を見て決める

私がずっと混乱していたのが、「縦に切る」「横に切る」という言い方でした。柵の置き方しだいで縦も横も入れ替わるので、動画を見ても分からなかったのは当然だったのかもしれません。

覚えておきたいのは、縦か横かではなく、筋目に対して直角に刃を入れるということです。筋目とは、身の表面に見える白っぽい線のこと。筋肉の繊維がどちらに走っているかを表しています。

この繊維を断ち切るように切ると、口に入れたときに筋っぽさがなく、なめらかで歯切れのいい食感になります。反対に、筋目と同じ向きに刃を入れると、繊維に沿って身が崩れやすく、食感も悪くなりがちです。

マグロの柵を右利きで平造りにする場合は、筋目が左下から右上に向かう「右肩上がり」になるように置いて、筋目に直角に刃を下ろすのが基本とされています。

◆しのいちのワンポイントアドバイス

私みたいに、動画を見ても縦か横か分からない人は、まず柵の表面の白い線を探してみてください。「その線をまたぐように包丁を入れる」とだけ覚えておけば、大きく外すことはないかなと思います。私も今は、この意識から少しずつ練習しているところです。

柳刃包丁で引き切りする手順

まず、柵の厚いほうを奥にしてまな板に置きます。右利きなら左手で柵を軽く押さえ、柳刃包丁の刃元を柵の右端に当てましょう。

次に、刃元から刃先まで全体を使いながら、手前に向かって一度で引きます。このとき、上から押しつける力はほとんど要りません。包丁の重さと長さに任せて「引く」意識を持つのがポイントです。

切り終わったら、切れた身を刃に乗せたまま右側へ送り、同じ向きに並べていきます。これを繰り返すと、切り身が少しずつ重なった、きれいな列ができあがります。

切るたびに固く絞った布巾で刃を拭いておくと、身がくっつかず、断面もきれいに保てます。

最初はゆっくりで大丈夫。スピードよりも、刃を途中で止めない・戻さないことを優先したほうが、仕上がりはぐっと変わるはずです。

白い皿に盛り付けられた厚切りのカツオの刺身

厚みを持たせて平造りにしたカツオの刺身

平造りとそぎ造りの使い分け

刺身の切り方にはいくつか種類がありますが、家庭でまず覚えたいのは平造りとそぎ造りの2つです。

平造りは、マグロやカツオ、ブリなど、身がやわらかく厚みのある魚に向く切り方。柵に対して包丁をまっすぐ立てて引き、厚みのある切り身にします。食べごたえがあって、身の弾力をしっかり楽しめます。

そぎ造りは、タイやヒラメなど身の締まった白身魚向き。柵を斜めに置き、包丁も寝かせて、そぐように引き切ります。断面が広くなるので舌の上で旨味を感じやすく、歯ごたえのある白身も食べやすくなるんです。

切り方向いている魚厚さの目安特徴
平造りマグロ、カツオ、ブリ、サーモン約8〜12mm身の弾力と食べごたえを楽しめる
そぎ造りタイ、ヒラメなどの白身魚約3〜7mm断面が広く、旨味を感じやすい
薄造りフグ、ヒラメ、カワハギ約2〜3mm皿の柄が透けるほど薄く引く
細造りイカ、サヨリ、キス幅約1〜5mm醤油や薬味が絡みやすい
角造りマグロ、カツオ約1.5cm角山かけや漬けに向く

※厚さはあくまで一般的な目安です。魚の状態や好みに合わせて調整してください。

白い皿にたっぷり盛り付けた皮付き白身魚の刺身

皮目に火を通した白身魚の刺身。身の締まった白身はそぎ造りにすると食べやすい

脂の乗りに合わせて厚さを変える

同じ魚でも、部位や脂の乗り具合によって、ちょうどいい厚さは変わってきます。

脂が少なくさっぱりした赤身は、やや厚めに切ると身の弾力と旨味をしっかり味わえます。一方、ブリの腹身や脂の乗ったサーモン、戻りガツオなどは、6〜7mmくらいと少し薄めにするのがおすすめ。口の中で脂がほどよく溶けて、くどさを感じにくくなります。

厚切りのブリは見た目の満足感がありますが、脂がよく乗った時期なら少し薄めに切ってみるのもあり。食べ比べてみると、同じ柵なのに印象が変わって面白いですよ。

あなたは厚切り派でしょうか、それとも薄切り派でしょうか。好みに正解はないので、魚の状態を見ながら自分の「ちょうどいい」を探してみてください。

ブリの刺身を厚めに切り大皿にきれいに盛り付けた様子

厚めに切ったブリの刺身を大皿に並べ、木の芽を添えた盛り付け

左利きが刺身包丁を選ぶときの注意点

左利きの人は、刺身包丁選びでひとつ注意したいことがあります。それが片刃の「向き」です。ここでは、右利き用を左手で使うと何が起きるのか、左利き用の選び方と価格の目安、そして両刃という選択肢について解説します。

右利き用の片刃を左手で使うと起きること

片刃の包丁は刃のつき方が左右非対称なので、利き手によって向きが決まっています。一般的に売られている柳刃包丁の多くは右利き用で、右手で持ったときに表の刃が右側に来るつくりです。

右利き用を右手で使えば、切った身は刃の傾斜に沿って自然に右へ倒れていきます。ところが、これを左手で持つと刃の傾斜が柵の内側を向いてしまい、刃が身に食い込むように逃げてしまう。まっすぐ切ることすら難しくなります。

左利きの人が「なんだか柳刃包丁はうまく使えない」と感じているなら、腕前ではなく刃の向きが原因かもしれません。

左利きの人は購入前に刃の向きを確認

片刃の包丁は、右利き用を左手で使うとまっすぐ切りにくくなります。家族で包丁を共有する場合も、誰がメインで使うのかを考えてから選びましょう。

左利き用柳刃包丁の選び方と価格の目安

左手で柳刃包丁を使うなら、刃が左側についた左利き用の柳刃包丁を選ぶのが基本です。

左利き用の片刃包丁は、普段とは逆の工程で作るぶん職人さんの手間がかかり、価格は右利き用の1.5倍程度に設定されることが多いようです(出典:堺實光『片刃包丁は右利き、左利き用に分かれています』)。

選ぶときは、商品名や説明に「左利き用」「左用」とはっきり書かれているか確認しましょう。ネット通販だと、同じ商品ページで右用・左用を選ぶ形式もあるので、注文時の選び間違いには気をつけたいところです。

刃渡りや素材の考え方は、右利き用と同じ。家庭で使うなら24cm前後から探すと、扱いやすさと引きやすさのバランスがとりやすいと思います。価格や仕様は製品ごとに異なるので、正確な情報は各メーカーの公式サイトでご確認ください。

左利きなら両刃の牛刀も選択肢になる

左利き用の柳刃包丁は種類が少なく、価格も上がりがち。そこで、はじめの一本として両刃の包丁を選ぶのも現実的です。

両刃は左右対称なので、基本的に利き手を選びません。牛刀なら三徳包丁より刃渡りが長く、引き切りもしやすくなります。さらに、刺身や肉の塊を薄く切るための細長い両刃包丁「筋引き包丁」もあり、左利きの人にとっては柳刃包丁の代わりになり得ます。

片刃ほど断面は光りませんが、よく研いで一方向に引けば、家庭の食卓には十分な仕上がりです。刺身を切る回数が増えてきたら、左利き用の柳刃包丁に切り替える流れでもいいかなと思います。

なお、両刃でも研ぎ方の比率によっては、わずかに右利き寄りの刃付けになっている製品もあります。気になる人は、購入前にメーカーへ確認しておくと安心です。

使用頻度で選ぶ自分に合う刺身包丁

ここまでの内容を踏まえて、実際にどの包丁を選べばいいのかを考えていきます。いちばん分かりやすい基準は「どれくらいの頻度で刺身を切るか」。あわせて、柳刃包丁を選ぶときの刃渡りや素材、切れ味を保つ手入れについても紹介します。

たまに切るなら三徳包丁で十分

月に1〜2回、スーパーで買った柵を切る程度なら、今持っている三徳包丁や牛刀で十分対応できます。私自身、三徳包丁一本でずっと刺身を切ってきました。

大事なのは包丁の種類より、刃の状態です。どんなにいい包丁でも、切れ味が落ちていればドリップが出てしまいます。専用の包丁を買う前に、まず今の包丁を研いでみる。それだけで、刺身の切り口が変わるのを実感できるかもしれません。

あなたは、刺身を月に何回くらい切りますか? その回数が、包丁選びのいちばん分かりやすい物差しになります。

頻繁に切るなら柳刃包丁が使いやすい

週に何度も刺身を切る、丸ごとの魚をさばく、来客時にきれいな刺身を出したい。こういう人は、柳刃包丁を一本持っておくと作業がぐっと楽になります。

家庭向けの刃渡りの目安

家庭のまな板やキッチンで扱いやすいのは、21〜27cmあたり。はじめてなら刃渡り24cm前後の柳刃包丁が扱いやすく、マグロやブリなど幅の広い柵をよく切るなら、27cmくらいあると引ききりやすいです。

ただし、まな板が小さいと長い包丁は持て余してしまいます。手持ちのまな板の大きさとの相性も、忘れずに考えておきましょう。

鋼とステンレスの素材の違い

鋼は切れ味が鋭く研ぎやすい反面、サビやすいのが難点。ステンレスはサビにくく手入れが楽ですが、製品によっては研ぎにくさを感じることもあります。

その中間にあたるのが、鋼をステンレスで挟んだ「合わせ(割込み)」タイプです。私の三徳包丁もこのタイプで、切れ味と手入れのしやすさのバランスがちょうどいいと感じています。刃先の鋼が出ている部分だけはサビやすいので、そこだけ気をつければ大丈夫です。

切れ味を保つ砥石と日々の手入れ

柳刃包丁でも三徳包丁でも、切れ味を保つには砥石が頼りになります。家庭なら、#1000前後の中砥と、#3000〜6000くらいの仕上げ砥があれば一通りの研ぎができます。中砥と仕上げ砥が1つになった両面砥石なら、場所もとりません。

片刃の柳刃包丁は、表の切刃を研いだあと、裏側を砥石にぴったり当てて数回だけ軽く研ぐ「裏押し」で、刃先の金属のめくれ(カエリ)を取ります。裏を研ぎすぎると片刃の良さが失われるので、ここは控えめにするのがコツです。

手軽な包丁研ぎ器は両刃専用の製品が多く、片刃には使えないものもあります。使えるかどうかは、購入前に説明書やメーカーの公式サイトで確認してください。

使ったあとは、洗ってすぐに水気を拭き取ること。保管するときは、包丁ケースや刃カバーがあると刃こぼれやケガの予防になります。

◆しのいちのワンポイントアドバイス

鋼の刃は、洗ったあとに布巾で水気を拭き取るだけで、サビの出方がかなり違います。私もついサボって茶色くしてしまうことがあるのですが、毎回サッと拭くほうが結局ずっとラクですよ。

刺身を安全においしく食べるための注意点

包丁と切り方が決まっても、刺身は生で食べる料理です。最後に、切る前にやっておきたい柵の選び方と下処理、そしてアニサキスへの正しい対策を紹介します。

切る前の柵の選び方と下処理

柵には、背中側の「背身」とお腹側の「腹身」があります。背身は高さと厚みがあり、脂が少なめでさっぱりした味わい。腹身は薄く平たい形で、脂がよく乗っています。

マグロの柵を選ぶときは、筋の入り方も見ておきましょう。筋が薄く、平行か緩やかな斜めに入っているものは刺身向き。反対に、筋が半円やV字を描いているものは筋が硬く口に残りやすいので、加熱料理に回すのがおすすめです。

パックの柵は、表面に出たドリップをキッチンペーパーでやさしく拭き取ってから切りましょう。生臭さが気になるときは、柵の重さに対して2%程度の塩を振って数分置き、出てきた水分を拭き取ります。生臭さのもとになる成分は水に溶けやすいので、水分と一緒に取り除きやすくなります。

アニサキス対策は包丁では防げない

刺身を安全に楽しむうえで欠かせないのが、寄生虫アニサキスへの対策です。アニサキスの幼虫は、サバやアジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの主に内臓に寄生していて、魚が死んで時間がたつと内臓から身へ移動することが知られています。

家庭でできる予防の基本は、新鮮な魚を選ぶこと、内臓をできるだけ早く取り除くこと、そして目で見て確認することです。そのうえで確実性を高めたい場合は、-20℃で24時間以上の冷凍、または70℃以上、あるいは60℃で1分以上の加熱が有効とされています(出典:厚生労働省『アニサキスによる食中毒を予防しましょう』)。

よくある誤解に注意

料理で使う程度の酢や塩、醤油、わさびでは、アニサキスの幼虫は死滅しません。また、細かい飾り包丁や細造りも、確実な予防策にはなりません。刺身を食べたあとに激しい腹痛などが出た場合は、自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。

刺身の切り方と包丁に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 三徳包丁で刺身を切るとき、いちばん大事なことは何ですか?

A. 包丁をよく研いでおくことと、前後に往復させずに一方向へ引いて切ることです。この2つを意識するだけで、断面のつぶれやドリップがかなり減ります。刃渡りが足りないときは、柵の幅を狭くしてから切ると引ききりやすくなります。

Q2. 家庭用の柳刃包丁は何cmを選べばいいですか?

A. 一般的な目安として、はじめてなら24cm前後が扱いやすいと思います。幅の広い柵をよく切るなら27cm前後も候補になりますが、まな板やキッチンの広さとの相性も大切です。サイズや仕様は製品ごとに異なるので、購入前にメーカーの公式サイトで確認してください。

Q3. 左利きでも右利き用の柳刃包丁を使えますか?

A. 左手で持つと刃の傾斜が逆向きになり、刃が身に食い込むように逃げるため、まっすぐ切るのが難しくなります。左手で使うなら左利き用の柳刃包丁を選ぶか、利き手を選ばない両刃の牛刀や筋引き包丁を検討してみてください。

Q4. 出刃包丁と柳刃包丁、最初に買うならどちらがいいですか?

A. スーパーの柵を刺身にすることが多いなら、柳刃包丁が先で困ることは少ないはずです。丸ごとの魚を自分でおろす機会が多いなら、出刃包丁も必要になります。自分が普段どんな形で魚を買っているかを基準に選ぶのがおすすめです。

Q5. 柳刃包丁を包丁研ぎ器で研いでも大丈夫ですか?

A. 市販の包丁研ぎ器は両刃専用の製品が多く、片刃の柳刃包丁には使えないものもあります。片刃対応かどうかを説明書やメーカーの公式サイトで確認し、不安な場合は砥石で研ぐか、刃物研ぎの専門店に相談してみてください。

刺身の切り方と包丁選びのまとめ

刺身は、柳刃包丁がなくても切れます。けど、頻繁に切るなら、やっぱり専用の包丁があると仕上がりも気分も違ってきます。最後に、この記事のポイントを振り返っておきましょう。

  • たまに柵を切るだけなら、よく研いだ三徳包丁や牛刀で十分対応できる
  • 普通の包丁でも、押し引きせず一方向に引き切るのが基本
  • 柳刃包丁は刃渡りの長さと片刃の構造で、断面がなめらかになりやすい
  • 出刃包丁は魚をおろす用で、刺身を引くのには向かない
  • 「縦か横か」ではなく、筋目に対して直角に刃を入れる
  • 左利きは片刃の向きを必ず確認し、左利き用か両刃を選ぶ
  • アニサキス対策は包丁や調味料ではなく、鮮度・目視・冷凍または加熱で行う

私もまだまだ、うまく切れる日とそうでない日があります。それでも、切り方がきれいに決まったときは、なんだかとっても嬉しいもの。うまくいかなくても刺身はおいしいので、あまり気負わず、少しずつ覚えていけたらいいかなと思っています。

包丁の価格や仕様、安全に関する最新の情報は、各メーカーや公的機関の公式サイトで確認してください。包丁の研ぎや選び方で迷ったときは、刃物店など専門家に相談するのもおすすめです。

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