
こんにちは、暮らし比較ナビのしのいちです。
ブリの柵を買ってきて、いざ包丁を入れようとしたとき「背と腹、どっちも同じ厚さでいいのかな?」と手が止まったこと、ありませんか。
実は私も、刺身の切り方はいまだによく分かっていません。
YouTubeを見ても、どれが縦でどれが横なのかすらピンとこなくて、正直なところ切り方はほぼ適当。うまくいく日もあれば、見事に失敗する日もあります。
それでも、うまく切れた日の刺身はなんだか嬉しいし、切り方ひとつで味の感じ方が変わるのも分かる気がするんですよね。
そこで今回は、ブリやハマチの柵を背身・腹身の身質に合わせて、どんな厚さと向きで切ればいいのかをじっくり調べてまとめました。
皮付きや半身、コストコなどで見かける大きなブロックの扱い方まで触れているので、「今日はブリで一杯やりたい」というときの手引きにしてもらえたら嬉しいです。
- ブリの背身と腹身で厚さと切り方を変える理由
- 柵を置く向きと筋目に対する包丁の入れ方
- 皮付き・半身・ブロックを刺身にする下準備
- ハマチやワラサなど呼び名ごとの切り方と包丁選び
ブリの刺身は背身と腹身で切り方を変える
ブリの柵は、同じ1匹から取れた身でも背側と腹側で性格がまるで違います。ここでは、それぞれの身質に合う切り方と、厚さの目安を見ていきましょう。

長方形の白い皿に、ブリの刺身を等間隔で並べた一皿
背身は平造りで食べ応えを出す
背身は、泳ぐときによく動かす背中側の筋肉です。高さと厚みがあって断面は長方形〜三角形に近く、脂はほどほどで身がキュッと締まっているのが特徴。さっぱりした旨味と、噛んだときのプリッとした弾力を楽しむ部位と言えます。
こうした身には、包丁をまな板に対して垂直に近い角度で入れ、手前に一気に引き切る「平造り」がよく合います。平造りは、マグロやカツオ、サーモンなど厚みのある魚に使われる基本中の基本の切り方。ある程度の厚さを残すことで、背身ならではの歯ごたえがしっかり伝わります。
逆に、背身を薄くそいでしまうと、せっかくの弾力が感じにくくなり「なんだか物足りないな」という印象になりがちです。背身は少し厚めの平造りで、噛む楽しさを残す。まずはこれを基本にしておくと失敗が少ないですよ。
腹身はそぎ切りで脂を軽くする
一方の腹身は、内臓を包んでいたお腹側の身。薄くて平べったく、断面は弓なりや「へ」の字のような形をしています。何より脂のりがよく、いわゆるトロに近い部分です。
脂が多い身を背身と同じ厚さで切ると、口の中で脂が一気に広がって、2切れ目、3切れ目で「ちょっと重いかも」と感じやすくなります。そこでおすすめなのが、包丁を寝かせて斜めに削ぐように引く「そぎ切り」。厚みを抑えつつ断面を広く取れるので、脂がほどよく溶けて、しつこさを感じにくくなります。
腹身の柵は薄いぶん、平造りにしようとしても高さが足りず、小さくて頼りない切り身になりがちです。そぎ切りなら薄い柵でも1切れの面積を稼げるので、見た目のボリュームも出しやすいんですよね。もちろん、腹身でも厚みがある部分なら薄めの平造りでもOK。「厚さを背身より少し控える」という意識さえあれば、切り方は柵の形に合わせて選んで大丈夫です。
部位ごとの厚さの目安
厚さは好みで変えていいものですが、最初は目安があったほうが安心ですよね。一般的に言われている数字をもとに、ブリの部位ごとの目安をまとめてみました。
| 部位 | 身の特徴 | 向く切り方 | 厚さの目安 |
|---|---|---|---|
| 背身 | 厚みがあり脂は控えめ、身が締まっている | 平造り | 約8〜10mm |
| 腹身 | 薄く平たい、脂のりがよい | そぎ切り・薄めの平造り | 約6〜7mm |
| 腹身の薄い端 | さらに薄く、銀皮が残りやすい | そぎ切り | 約5mm前後 |
※数値はあくまで一般的な目安です。脂のり、柵の大きさ、好みによって調整してください。
養殖のブリやハマチは、背身でも脂がしっかりのっていることが少なくありません。その場合は背身も1〜2mmほど薄めにしてみると、ちょうどよく感じるかもしれません。まずは1切れ食べてみて、厚さを微調整していくのがいちばん確実です。
ブリの柵を見分けて向きを決める
切り方が決まったら、次は柵をどう置くか。ブリ刺身の出来は、包丁を入れる前の「向き決め」でかなり左右されます。形の見分け方から、筋目への刃の当て方まで順に解説します。
背身と腹身は形で見分ける
スーパーのパックに「背」「腹」と書かれていないこともありますよね。そんなときは、柵を横から眺めて断面の形をチェックしてみてください。
背身は高さがあってずんぐりとした長方形〜三角形。色は腹身より少し赤みがあり、表面のツヤも落ち着いた印象です。腹身は薄く平たい弓なりの形で、白っぽく脂が浮いたような見た目をしています。お腹側の端に銀色の薄皮(銀皮)がうっすら残っていたら、ほぼ腹身と考えていいでしょう。
また、柵の片側に赤黒い「血合い」が走っている場合、その血合いがある側が背と腹の境目、つまり身の中心側です。血合いの位置は、次の向き決めでも手がかりになりますよ。
厚い側を奥にして皮目を上に置く
右利きの場合、平造りでは柵の厚い側(血合い側)を奥、皮が付いていた面を上にしてまな板に置くのが基本です。皮目側を上にするのは、切ったあとに見栄えのよい面がそのまま皿の上側にくるから。そして厚い側を奥にしておくと、刃元を奥の高いところに当ててから手前へ引き下ろす動きが自然にできます。
皮を引いた面は、よく見ると身より少し色が濃かったり、筋の模様が見えたりします。どっちが皮目側か迷ったら、ツルッとしていて血合いに近い色味の面を探してみてください。
そぎ切りのときも、置き方の考え方は同じです。ただし切り始めは柵の左端からになり、包丁を右側に寝かせて入れていきます。平造りは右端から、そぎ切りは左端から、と覚えておくと混乱しにくいですよ。
筋目に対して直角に刃を入れる
ブリの柵の表面をよく見ると、白っぽい線が斜めに何本も入っています。これが筋目、つまり筋肉の繊維の並びです。刺身を切るときは、この筋目に対して直角に刃を入れるのが大原則。繊維を断ち切ることで筋っぽさがなくなり、なめらかな口当たりになります。
反対に、筋目と同じ方向に包丁を入れてしまうと、繊維に沿って身が裂けたり崩れたりしやすく、食べたときにも筋が口に残ります。平造りの場合は、筋目が左下から右上に向かう「右肩上がり」になるよう柵を置き、そこへまっすぐ刃を下ろすと、自然と筋を断つ角度になります。
とはいえ、ブリの柵は部位によって筋の角度がまちまち。厚い側を奥にする置き方と、筋目を断つ角度がぴったり両立しないこともあります。そんなときは、包丁を少し斜めに入れて筋を断つほうを優先してみてください。多少切り身の形がいびつになっても、口当たりはぐっとよくなりますよ。
ブリの背身を刺身に切る手順
ここからは、背身を平造りにする具体的な流れです。準備、切り方、並べ方の3段階に分けて説明するので、柵を目の前にしながら読み進めてみてください。
柵の水気を拭いて冷やしておく
切る前にまずやりたいのが、柵の表面の水気(ドリップ)をキッチンペーパーで押さえるように拭き取ること。パックの中で出た水分には生臭さのもとが含まれているので、これを取るだけでも味の印象が変わります。水で洗うと身が水っぽくなるので、基本は拭くだけで十分です。
次に、柵は冷蔵庫でしっかり冷えた状態のまま切りましょう。脂の多いブリは、手の熱や室温で身がゆるむと包丁にまとわりつき、断面が荒れやすくなります。まな板と包丁も、使う直前に水気を拭いておくと身が滑りません。
もうひとつ地味に効くのが、固く絞った布巾やペーパーを手元に置いておくこと。ブリは脂で刃がくもりやすいので、数切れごとに刃を拭くと最後まで同じ切れ味で進められます。
刃元から刃先まで一度で引き切る
準備ができたら、柵の右端から切っていきます。包丁の刃元を柵の奥の角に当て、力で押しつぶすのではなく、包丁の重さと刃渡りを使って、刃元から刃先まで手前へスーッと一度で引くのがコツです。
ここで大事なのが「往復させない」こと。ノコギリのように前後に動かすと、身の細胞が潰れて旨味を含んだ水分が出てしまい、断面もガタガタになります。一方、よく研いだ包丁で一方向に引き切ると、切り口の角がピシッと立ち、ツヤのある仕上がりになるんです。醤油が必要以上に染み込みにくくなるので、ブリ本来の味も感じやすくなりますよ。
厚さをそろえるには、1切れ目の厚さを目で覚えて、2切れ目以降も同じ位置に刃元を当てるよう意識するのが近道。最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。数切れ切るうちに、だんだん手が感覚をつかんでいきます。

厚めに切ったブリの刺身を、大皿に何列も並べた盛り付け
切った身は右へ送って並べる
平造りでは、引き切った身を包丁の刃に乗せたまま右側へそっと送り、倒すように重ねていきます。切るたびに手でつまむと、体温で脂がゆるんだり形が崩れたりするので、なるべく包丁で運ぶのがおすすめです。
皿に移すときは、切った順に少しずつずらして重ねると、厚みの揃い具合がきれいに見えます。和食では切り身の数を3切れ、5切れのような奇数にするのが縁起がよいとされていて、奥を高く手前を低く盛ると立体感も出ますよ。大葉や大根のツマを添えれば、白っぽくなりがちなブリの皿がぐっと華やかになります。
◆しのいちのワンポイントアドバイス
偉そうに手順を書いていますが、私自身まだまだ切り方は勉強中で、うまくいかない日も普通にあります。でも、形がちょっと不揃いでも刺身は美味しいんですよね。まずは「往復させない」「筋を断つ」の2つだけ意識してみると、それだけで気持ちよく切れる回数が増えるはずです。
ぶり腹身を刺身にする下処理とコツ
腹身は脂がのって美味しいぶん、骨や銀皮が残りやすく、ちょっとした下処理で食べやすさが大きく変わる部位です。切る前の準備と、そぎ切りのポイントを見ていきましょう。
腹骨と血合い骨を先に取り除く
パックの腹身の柵は、たいてい骨が取り除かれています。ただ、半身や大きめの柵だと、お腹側の縁に薄く硬い「腹骨」が残っていることも。腹骨は、骨の下に包丁を寝かせて入れ、骨ごと薄くすくい取るように切り落とすのが一般的です。
もうひとつ気をつけたいのが、背と腹の境目に並ぶ細い「血合い骨(小骨)」。指で柵の中央付近をなでてみて、チクチク当たるものがあれば残っています。骨抜きでつまみ、骨が入っている頭側へ向かって斜めに引き抜くと、身が割れにくいですよ。まっすぐ上に引っ張ると身ごとちぎれてしまうので、ここは焦らず1本ずつが正解です。
包丁を寝かせて断面を広く取る
腹身のそぎ切りは、柵の左端からスタートします。包丁を右側に寝かせ、刃をまな板に近い角度にして、刃元から刃先まで手前にゆっくり引いていきましょう。左手の指先を柵に軽く添えておくと、身が動かずに安定します。
寝かせる角度が大きいほど断面は広く、薄くなります。厚さの目安は6〜7mmほど。脂の多い腹身はこのくらいにすると、口の中でスッと溶けて甘みを感じやすくなるんです。切り終わりの直前だけ包丁を少し立てると、切り身の端に角が立って見た目もきれいに仕上がります。
腹身は身がやわらかく、包丁に脂がつきやすい部位でもあります。途中で刃が引っかかるように感じたら、それは脂のサイン。一度刃を拭いてから続けると、断面が荒れにくくなりますよ。
銀皮と薄い端は無理に揃えない
腹身の外側に残る銀色の薄皮は、食べても問題ないものの、気になるなら包丁でそっとそぎ取っても構いません。残す場合は、皿に盛ったときに銀皮が見える向きにすると、ブリらしい見た目になります。
また、腹身の端はどうしても薄くなるので、ほかの切り身と同じ大きさにそろえるのは難しいもの。無理に整えようとして何度も包丁を入れるより、端は小さめのそぎ切りにして、ツマの手前に添えるくらいの気楽さでいいと思います。細かく刻んで、ネギや薬味と和えて小鉢にするのもアリですよね。
皮付きや半身・ブロックの切り方
ブリは柵だけでなく、皮付きの半身や大きなブロックで売られていることもあります。サイズが大きいほど「どこから手をつければ…」となりがちなので、刺身にするまでの流れを押さえておきましょう。
ブリの皮は包丁より手で引く
ブリの皮はやや硬めなので、刺身にするときは皮を引いてから切るのが一般的です。皮を下にしてまな板に置き、尾側の端から数ミリのところに包丁を斜めに入れて、皮に届いたところで刃をまな板とほぼ平行に寝かせます。
ここからがポイントで、包丁を前に押し進めるのではなく、包丁を持たない手で皮の端をつかみ、小刻みに左右へ揺らしながら引っ張るイメージです。包丁はほぼ固定したまま、皮のほうを動かすと、刃が皮と身の間を自然に滑っていきます。包丁側に力を入れると、皮を突き破ったり身を大きく削いだりしやすいので注意しましょう。
皮目の旨味を楽しみたいなら、皮付きのまま皮目をバーナーで炙る「焼き霜造り」という方法もあります。皮がやわらかくなり、香ばしさも加わるので、ブリの皮好きさんには試してほしい食べ方です。

皮目に火を入れた皮付きの白身魚の刺身。皮を活かす造り方の一例
半身は血合い骨を境に背と腹へ分ける
半身で手に入れた場合は、いきなり刺身にするのではなく、まず柵に分けます。流れとしては、最初にお腹側の腹骨をすき取り、次に身の中央に並ぶ血合い骨の両側へ包丁を入れて、骨の列ごと細長く切り離し、背身と腹身の2本の柵に分けるという手順が一般的です。
柵に分けたら、それぞれ皮を引き、中央側に残った血合いは好みで薄く切り取ります。血合いは鉄分を含んだ部分で、時間がたつと黒ずみやすく、クセもあるので、見た目を重視するなら取っておくと皿がきれいにまとまりますよ。
大きな半身をさばくときは、作業スペースも大事です。まな板から身がはみ出すと切る角度が安定しないので、大きめのまな板を用意しておくと格段にやりやすくなります。
大きなブロックは食べる分だけ柵にする
コストコなどで売られている大きなブリのブロックは、量が多いぶん一度に全部を刺身にしないのがコツです。まずは背と腹に分け、さらに長さや幅を扱いやすい柵の大きさに切り分けてから、その日に食べる分だけを刺身にしましょう。
幅が広すぎる柵は、包丁を一度引いただけでは切りきれず、どうしても往復しがちです。柵の幅を包丁の刃渡りに対して余裕のあるサイズに整えておくと、平造りもそぎ切りも一引きで決まりやすくなります。
残りの柵は、表面の水気を拭いてキッチンペーパーで包み、ラップで空気を抜いて冷蔵庫へ。ただし生食できる期間は短いので、パッケージの表示に従い、早めに食べきるか加熱調理に回すのが安心です。
生食の安全面について
ブリやハマチに限らず、海産の魚にはアニサキスという寄生虫がいる場合があります。刺身には「刺身用」「生食用」と表示されたものを選び、切るときも身に白い糸状のものがないか目で確認しましょう。一般的な料理で使う程度の酢や塩、醤油、わさびでは死滅しないとされています。予防法の詳細は公的機関の情報を確認し、食後に激しい腹痛などが出た場合は速やかに医療機関を受診してください。(出典:厚生労働省『アニサキスによる食中毒を予防しましょう』)
ハマチやワラサなど呼び名別の切り方
ブリは成長とともに名前が変わる出世魚。売り場で「ハマチ」「ワラサ」「フクラギ」と書かれていても、中身は同じブリの仲間です。呼び名の違いと、サイズに合わせた切り方の考え方を見ていきます。
地域で変わる出世魚の呼び名
ブリの呼び名は、地域によってかなりバラバラです。代表的な例をまとめると、次のようになります。
| 地域 | 小さい頃 | 中くらい | 大きめ | 成魚 |
|---|---|---|---|---|
| 関東 | ワカシ | イナダ | ワラサ | ブリ |
| 関西 | ツバス | ハマチ | メジロ | ブリ |
| 北陸 | コゾクラ | フクラギ | ガンド | ブリ |
このほか、九州など一部の地域では若いブリを「ヤズ」と呼ぶこともあります。また、養殖ものは大きさに関係なく「ハマチ」として売られていることも多いんです。サイズの区切りは地域や人によって違うので、名前はあくまで大きさのおおまかな目安くらいに考えておくといいですよ。

マグロやサーモン、タコと一緒にハマチの刺身も並んだ食卓
ツバスやヤズは身の厚みで決める
ツバスやワカシ、ヤズのような小ぶりのサイズは、身が薄く、天然ものなら脂も控えめなことが多いです。柵そのものに高さがないので、平造りにすると細くて小さな切り身になりやすいんですよね。
そんなときは、そぎ切りで断面を広く取るか、身の厚い部分だけ平造りにするのがおすすめです。脂が少ないぶん、背身でもやや厚めに切ってしまって大丈夫。さっぱりした身は、しっかり噛んだほうが旨味が伝わりますよ。
ハマチやワラサは背と腹で分ける
ハマチやイナダ、フクラギ、ワラサ、メジロくらいのサイズになると、背と腹で身質の違いがはっきり出てきます。基本の考え方はブリと同じで、背身は平造り、脂の多い腹身はそぎ切りか薄めの平造りという使い分けでOKです。
特に養殖のハマチは、背身まで脂がのっていることがよくあります。脂が多いと感じたら、ブリの目安よりも少し薄めを意識してみてください。反対に、秋口の天然ワラサのように身が締まった個体なら、背身を厚めにして弾力を楽しむのもいいですね。
◆しのいちのワンポイントアドバイス
売り場の名前に振り回されなくて大丈夫です。ハマチでもワラサでも、柵を手に取って「厚みはあるか」「脂は多そうか」の2点を見れば、平造りにするかそぎ切りにするかは自然と決まります。名前より、目の前の身をよく見ることが近道ですね。
大きな柵ほど長い柳刃が扱いやすい
ブリの刺身を気持ちよく切れるかどうかは、包丁との相性も大きく関わってきます。刃渡りの長さがなぜ大事なのか、どんな道具をそろえると楽になるのかをお話しします。
刃渡りが短いと往復してしまう
刺身をきれいに切る基本は、刃元から刃先までを一方向に使って一度で引き切ること。ところが、ブリの柵は厚みも幅もあるので、刃渡りが短い包丁だと一度引いただけでは切りきれず、つい押し戻して往復してしまいがちです。
往復すると、そのたびに身の細胞が押しつぶされ、旨味を含んだ水分が出たり、断面がガタついたりします。脂の多い腹身は特に崩れやすいので、差がはっきり出るところです。
その点、刺身用の柳刃包丁は刃が長くて細いうえ、片側だけに刃がついた「片刃」という構造。切り離した身のほうだけを外へ押し出すように進むので、まな板に残る側の断面をつぶしにくいという特徴があります。刺身包丁で切った断面がツヤッと光るのは、こうした構造のおかげなんですね。なお片刃は刃の向きが決まっているため、左利きの人は左利き用を選ぶ必要があります。
家庭で選びたい柳刃の長さ
家庭で刺身をよく切るなら、刃渡り21〜24cm前後の柳刃包丁が扱いやすい長さとしてよく挙げられます。ブリの半身や大きなブロックをよく買う人なら、24cm以上のものも候補になるでしょう。ただし刃が長くなるほど取り回しに慣れが必要で、置き場所やまな板の大きさとの兼ね合いもあります。これらはあくまで一般的な目安なので、キッチンの広さや手の大きさに合わせて選んでくださいね。
とはいえ、刺身包丁がないと刺身が切れないわけではありません。私が普段使っているのも、実は家庭用の三徳包丁です。よく行くスーパーに数ヶ月に1回、刃物研ぎの方がお店を出してくれるのですが、その研屋さんが置いていた包丁を購入しました。鋼をステンレスで覆ったタイプで、さすが鋼だけあってよく切れるので重宝しています。刃渡りより前に、まずは切れ味がよい状態を保つこと。そのうえで、ブリのような大きな柵を頻繁に切るようになったら、長めの柳刃を検討するという順番でもいいのかなと思います。
刃物の素材や手入れ方法は製品によって違うので、購入前にはメーカーの公式サイトなどで正確な情報を確認するのがおすすめです。
◆しのいちのワンポイントアドバイス
鋼の刃が出ているタイプの包丁は、本当によく切れる反面、使ったあとによく洗って水気を拭いておかないと、すぐにサビが出ます。サビたからといって大ごとではないのですが、ブリのように脂の多い魚を切ったあとは特に、洗ってすぐ拭くクセをつけておくと気持ちよく使い続けられますよ。
骨抜きとまな板もあると楽になる
ブリを刺身にするなら、包丁と一緒にそろえておきたいのが骨抜きとまな板です。骨抜きは、柵に残った血合い骨をつまんで抜くための道具。指やキッチンバサミでは身が崩れやすいので、先がしっかり噛み合うものが1本あると安心です。
まな板は、柵や半身を置いたときに両端に余裕が出るくらいの大きさが理想。刃渡りの長い包丁を使うなら、なおさら横幅がほしくなります。魚の脂やにおいが気になる場合は、魚専用のまな板を分けておくのもひとつの方法ですね。

一定の厚さに切りそろえた刺身を一列に並べた皿と、大皿の刺身盛り
ブリ刺身の切り方に関するよくある質問(FAQ)
Q1. スーパーで買ったブリの柵は、切る前に水で洗ったほうがいいですか?
A. 基本的には水で洗わず、キッチンペーパーで表面の水気を押さえるように拭くだけで大丈夫ですよ。水で洗うと身が水っぽくなり、旨味も逃げやすくなります。においが気になるときは、ごく軽く塩をふって数分置き、出てきた水分を拭き取る方法もあります。
Q2. 三徳包丁でもブリの刺身は切れますか?
A. 切れ味がよい状態なら、三徳包丁でも十分切れます。私も普段は家庭用の三徳包丁で刺身を切っています。ただ、刃渡りが短めなので、大きな柵だと一度で引き切れずに往復しやすいのが難点です。柵を小さめに切り分けてから刺身にすると、扱いやすくなりますよ。
Q3. ブリの血合いは取ったほうがいいですか?
A. 食べても問題はないので、好みで決めてOKです。血合いは独特のクセがあり、時間がたつと黒ずんで見た目も落ちやすい部分。見た目をきれいにしたいときや、クセが苦手な方がいる場合は、薄く切り取っておくと食べやすくなります。
Q4. 冷凍のブリの柵は、どう解凍すると切りやすいですか?
A. 冷蔵庫でゆっくり解凍し、中心がまだ少し硬い「半解凍」くらいで切ると、身が崩れにくくきれいに切れます。解凍中に出た水分はしっかり拭き取ってください。解凍方法はパッケージに記載されていることも多いので、表示があればそちらを優先しましょう。
Q5. 切ったブリの刺身が余ったら、翌日も刺身で食べられますか?
A. 切った刺身は空気に触れる面が多く、傷みやすいので、できるだけその日のうちに食べきるのがおすすめです。残ったときは、パッケージの消費期限を確認したうえで、漬けにして早めに食べるか、火を通してブリ照りなどにするほうが安心です。体調に不安がある方は、医師などの専門家に相談してください。
まとめ
ブリの刺身は、背身と腹身を同じように切るより、身質に合わせて厚さと切り方を変えるだけでぐっと美味しく感じられます。最後に、今回のポイントを振り返っておきましょう。
- 背身は厚みがあり身が締まっているので、約8〜10mmを目安に平造りにする
- 脂の多い腹身は、約6〜7mmを目安にそぎ切りか薄めの平造りにする
- 柵は厚い側を奥、皮目側を上に置き、筋目に対して直角に刃を入れる
- 包丁は往復させず、刃元から刃先まで一度で引き切る
- 半身は腹骨をすき取り、血合い骨を境に背と腹の柵に分けてから切る
- ハマチやワラサなど呼び名が違っても、厚みと脂のりを見て切り方を決める
- 大きな柵をよく切るなら、刃渡りに余裕のある柳刃包丁が扱いやすい
数値はどれも一般的な目安なので、実際に1切れ食べてみて、あなた好みの厚さを探してみてください。私もまだ切り方は勉強中ですが、うまく切れた日はやっぱりなんだか嬉しいものです。今夜のブリ、ちょっとだけ切り方を変えて楽しんでみませんか?

